火星居住基地の怪死

 

 

SFマガジン 2020年12 月号

SFマガジン 2020年12 月号

  • 発売日: 2020/10/24
  • メディア: 雑誌
 

f:id:herakoimFujito:20201129183418j:plain(mふじと画)

  最初の怪死患者に会った医師の夏目田は、病因を探り始めて遺族に聴き取りを開始しました。その時に前回”グルメ”という言葉がでてきました。

  限られた空間の居住基地では、多くの人は食堂で画のような自販機の少ないメニュから選んで食事をします。食事は選択パネルにタッチするとフリーズドライに湯を加えたものが配膳口にでてくるので、自分のトレイにとります。衛生上食品加熱処理されています。しかし、食に興味がある一部の”グルメ”の人はこんな単純なメニュに堪えられますかねえ? もちろん食材も地球の様にはいきません。はたして、どんな工夫が・・?

  ちなみに人物名や画の表示に地球時代の日本文化は火星でも残っていますが、居住民の出身は様々なので共通言語が使われています。物語を分かりやすくするために日本語を使ってます。

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目次

第一章:腫瘍の分離
第二章:火星居住基地での奇妙な死者
第三章:遺族への聴き取り(以上済んだよ)
第四章:グルメクラブへの訪問(今回)
第五章:食の調査
第六章:死因の調査
第七章:ウイルスと病因
第八章:エピローグ

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・・では、海産物を食べたことがないし肉も高級品で口にする機会も少ない。 そのためかグルメクラブとかいう同好会に入って、同じ食経験のある同年配の人達と食卓を囲み昔話を楽しんでいたようです」

とC氏の娘。

(以上前回まで) 

 

第四章:グルメクラブへの訪問

  B氏とC氏が月居住基地のグルメクラブのメンバーであったと耳にした夏目田は、月基地のグルメクラブの活動について少し調べてみることにした。  ホームページによると、火星基地グルメクラブの所在地は文化活動 センター内にあり、共用施設で定期・不定期の集会を催していた。 

  夏目田博士は月基地のグルメクラブについて何か情報を得られればとセンター事務局に連絡し、グルメクラブの集会の見学や、クラブメンバーとの面談に出かけた。

 

  センター事務局にあるグルメクラブの公開資料を見せてもらった。 クラブ発足以来の活動記録であった。 ちなみに、2XXX年X月の月基地での定期集会の動画ファイルのタイトルは「地球の懐かしの味」であった。 2YYY年Y月の火星基地の集会のタイトルは「昆虫の新作料理」であった。 集会毎にタイトルは変わるそうだ。 

  グルメクラブは、歴史が古く月居住基地にて結成され現在に至っている。 月居住基地メンバーが、火星へ移住しグルメクラブ火星支部を運営している。 月居住基地メンバーの方には当然年配者が多く、地球での実体験があるせいか地球の懐かしい味への郷愁は強いようだ。

  動画には集会以外に親睦会のもあり、月居住基地におけるクラブの親睦パ―ティーでは、料理を囲みながら談笑しているグループが映っている。 卓上には懐かしの地球の再現メニュー料理だろうか、料理の映像を見ると、すき焼きのような鍋料理やハンバーガー、ホットドッグやピザなど。 
「当時は、まだ地球からの運搬食材もあったろう。 ファーストフードでも懐かしく人気があるんだなあ」

 (次回に続く)