火星居住基地の怪死

 

SFイラストレーション

 

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図:茶虎猫(いらすとや)

 

  前回のブログでは、月や火星に移住する場合に一緒に連れていける、あるいは暮らせるような心の癒やしとなるペットについて一考しました。

 

  宇宙船での運搬や彼の地での飼育を考えると、当然大型生物や大規模施設が必要な生物は不適である。 

  宇宙を背景にした映画やTVでは、ペットが出てくる場面は私にはあまり記憶がない。 

  今一つ思い出したのは、リドリー・スコット監督、シガニー・ウィーバー主演の”エイリアン”である。 ストーリーは、エイリアンが猫に寄生している可能性を匂わせながら、最後には唯一生き残った女主人公は猫を連れて脱出に成功する。 映画の猫は上図のような茶虎猫だった気がする。 猫は寄生されていないようだ。

  この映画を見ると、猫は居住基地のペットとして飼えそうだね。

 

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目次

第一章:腫瘍の分離
第二章:火星居住基地での奇妙な死者
第三章:遺族への聴き取り
第四章:グルメクラブへの訪問

第五章:食の調査

第六章:死因の調査

第七章:ウイルスと病因(現在はここ!
第八章:エピローグ

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  夏目田博士と柴里博士は、入院患者の病因に愛玩動物からの微生物感染が考えられ、原因調査のために動物を飼育している居住民のリストの閲覧をしたいと、生物センターに申請した。 

  指定された日に訪問すると、担当者からは閲覧の快諾を得た。 

  病因としては食材に混じったおそらくウイルスを考えていると話すと、関連しそうな生物センターの業務内容について話してくれた。

  

(以上前回まで。) 

 

  月や火星居住基地に生物センターが設立された目的は、人と動植物の壁を取除いた共存の生態系を作ることである。 

  現状は、家庭菜園や愛玩・介護動物の同居が月基地では早くから要望が出て認められた。 

  火星基地でも同様な要望が挙がり、申請許可の数が増えつつある。 

  ただ、限られた居住基地のスペースと居住民の数を考慮しながら動植物の繁殖はまだ規制が必要である。 例えば、植物だと配布種数や栽培面積の制限。 動物だと繁殖は生物センター内で。 

  従って、動物は数を制限するわけで、多すぎると減らすのである。 

  不定で数も少ないので、一応引取受付の情報は公開するが、多くの居住民は無関心である。 

  愛玩動物として引き取られたり、小魚類や小型動物は食材として引き取られたりするようである。 

  月居住基地時代からも常連の食通の人々からの申し込みはあった。 

肉食は居住基地での食材確保のため合法であった。 

  さらに、医薬や生物研究においても実験動物供給元としての共同研究者として役割を果たしている。 

 

  以上の様に、肉食を介したウイルス感染を疑っていた夏目田博士達にとっては、その考えをサポートするような情報が幸い得られた。 

  柴里博士は、癌移植動物で抗癌剤の開発を行っている医学系研究者に問い合わせると、農学・生物学系研究者で食品開発の目的で肉組織を移植動物で増やそうとしているグループもいるとのことだった。 

  月居住基地では、この方法で得られた肉も合法であり、食品衛生法上も加熱すれば問題ないとのことのようだ。 はたして、食通達はこの様に作られた肉を口にしたのか?

 

  外森博士のグループが生物センターのリストにある愛玩・介護動物を含む対象動物に行った遺伝子検査では、やはり特定の種類のげっ歯類レトロウイルスを保持していた。 

  ただし、やはり変異ウイルスは見つからなかった。 もっとも、遺伝子検査は少量の血液で行われるので、血液以外に感染している場合は検出されなかった。 

  つまり、ウイルスが検出された動物は、生まれつき自分の遺伝子中にウイルス遺伝子が入り込んでいると思われる。 

  ウイルスを持つ動物の種類が限定されたので、今後すべきことは個々のげっ歯類を詳しく調べて変異ウイルスを見つけることである。

 

(次回に続く)