SF異星人カグヤ姫物語

 

 

 

 

 

左図:栄養剤 中図:昔話の老夫婦 右図:薬研(やげん)(いずれも”いらすとや”) 

 

 今回の図は栄養剤昔話に出てくるお爺さんとお婆さん漢方薬調剤で見かける道具ですが、本日の話でどう関係があるのかな?

 

  本SFショートではカグヤ姫異星人として描かれています。 

  この異星人は地球で言えば昆虫に似た生物です。 

  しかも、全く異なる2つの生物より成る社会を作っています。 

  1つは大部分を占める生物ですが、もう1つは少数派で多数派の生物に気付かれないように擬態の能力により多数派に紛れて生存しております。 

  カグヤ姫は少数派の生物に属します。

 

  カグヤ姫達異星人は、故郷の星が環境破壊などで住みづらくなり、一部は他の星での生存を期待して故郷の星を出発しました。  

  しかしながら、移住船での居住星の探索の旅の途中に仲間を感染症で失います。

  残ったカグヤ姫達の生残には、ライフサイクルの維持に不可欠なパートナーと成りうる生物を見つけないといけません。

  つまり、失った仲間がやってくれていた子孫の生育を、かわりに地球人の手を密かに借りようと企てます。

 

  ただ、地球人とともに生活するには、地球人の餌(食事)が異星人に利用可、つまり食材として適しているかどうかも調べなければなりません。 

  異星人に有害なものは避けなければいけませんし、手に入らない必需品は自分達で用意しなければなりません。

  異星人に不可欠な栄養は別に取らなければなりません。

  現代ならさしづめ栄養剤の様なものでしょうか?

 

  また、育ての親候補は人の良さそうな老夫婦といったところでしょうか?

  候補の老夫婦は漢方薬屋さんらしい。

 

    

  異星人達は、移住可能かの判断材料のデータを現在収集中です。

  場合により、異星人達は地球を離れて新たな移住星候補を探索する旅に出なければなりません。

 

  本SFは、題名の通りカグヤ姫を含む異星人達の立場でみた物語です。

  さて、かぐや姫が出てくる「竹取物語」ですが、あらためてWikipediaを見てみますと、平安時代に成立した物語で、作者不明で、正確な成立年も未詳とあります。

  「源氏物語」の文中にも記述があり、日本最古の物語だそうです。

  9世紀後半から10世紀前半頃に成立したとされる、かなによって書かれた最初期の物語の1つだそうです。

 

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目次

第1章:異星人

第2章:地球

第3章:カグヤ姫(現在

第4章:求婚

第5章:領主三角(みかど)氏

第6章:カグヤ姫の憂鬱

第7章:帰還

第8章:エピローグ

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(前回まで)

 

 また、地球人達は、食材の味だけでなく保存にも有効な微生物による発酵食品を積極的に利用している。 

 味や栄養のバラエティーが広がる利点があるようだ。 

 前述したように、後に異星人のカグヤ姫は地球人の老夫妻に育てられることになるのだが、老夫妻は大陸(中国)文化の知識があり、健康に良いと積極的に豆の発酵物(今の納豆のようなもの)を家族や身内の者達に食材の一つとして取らせていた。 

 一緒に暮らすようになったカグヤ姫は少量から恐る恐る食したが、幸い問題なかった。

 

           

 ちなみに地球の食料であるが、異星人達も消化吸収でき栄養とすることができる。   

 ただし、必須栄養素が地球人と異星人とは完全に一致はしていないため、異星人達は地球の食料から異星人用の栄養素を作り出す必要があった。 

 そのために異星人達は、地球人達の栄養素を異星人達に必要な栄養素に変換できる酵素類を見つけ出して大量培養し、さらにそれを錠剤化し、地球人との一緒の生活において滋養強精の名目で定期的に飲み健康を維持するようにした。  

 つまり具体的には、地球人の腸内細菌と異星人の腸内細菌を選抜して、地球の食べ物を細菌が消化して得た中間産物を、さらに異星人の細菌が異星人の栄養となるように変えるのである。 

 こうして得た錠剤に異星人の健康強化な栄養分も加えられた。 最近の地球で言う栄養剤とか栄養補助食品といったところである。

 

 

第3章:カグヤ姫

育ての親

 

   一方、やがてカグヤ姫を引き取り育てることになる老夫婦はそんな事とは露知らず、異星人達の着陸地点の山間部から数日の旅行で到着する領主の地方豪族を長とする地方都市に住居を構えていた。

 

 お爺さんは、中国伝統医学を学んだ僧医を師匠とする弟子の一人であり、地方の有力者を主に、比較的広く庶民にも医療を施す師匠の活動の一翼を担っていた。 

 ただ、歳を取ってきたことでいろいろなを揃えて、医者や人々の薬を必要とされる場合に提供する薬問屋か薬局のような仕事が多くなった。 

 また、請われて医療関係者や一般庶民の前で薬や衛生について講話するようになった。 

 今まで患者に1対1対応してきたが、体力的に厳しくなってきたので、広く人々の衛生面や健康面の維持に役立とうと努めることにしたのだ。 

 それでも、薬草の効能、採取できる場所や時期、調整法などの豊富な知識があるため、今でも定期的に弟子や使用人達を連れて山へ薬草採取に行っていた。

 料理人や動物撃退のための猟師や弟子など薬草採取人員などを引き連れ、半月から一月ほどの採取旅行である。

 

 お爺さんとお婆さんの息子及び娘はそれぞれ既に独立して離れた地方で家庭を持っていた。 

 二人共薬関係の仕事をしていた。

 孫達も地理的に離れているのでなかなか会えず、二人だけの生活ではなんとなく寂しく感じるようになった。 

 このなんとない物足りなさで、機会があればカグヤ姫のような孫くらいの年頃の子供の世話を容易に引き受けるような背景にはなっていた。

 

 

(次回に続く)