勿論、ヒト(地球人)の赤ん坊はお母さんのお腹で育ち生まれてくるわけですが、カグヤ姫はちょっと違って竹の中に見出されました。
子供達が既に独り立ちした老夫婦は、かわいい竹の中の赤ちゃん(カグヤ姫)を家に連れ帰り育てようと決めます。
本SFショートではカグヤ姫は異星人として描かれています。
この異星人は地球で言えば昆虫に似た生物です。
しかも、全く異なる2つの生物より成る社会を作っています。
1つは大部分を占める生物ですが、もう1つは少数派で多数派の生物に気付かれないように擬態の能力により多数派に紛れて生存しております。
カグヤ姫は少数派の生物に属します。
カグヤ姫達異星人は、故郷の星が環境破壊などで住みづらくなり、一部は他の星での生存を期待して故郷の星を出発しました。
しかしながら、移住船での居住星の探索の旅の途中に仲間を感染症で失います。
残ったカグヤ姫達の生残には、ライフサイクルの維持に不可欠なパートナーと成りうる生物を見つけないといけません。
つまり、失った仲間がやってくれていた子孫の生育を、かわりに地球人の手を密かに借りようと企てます。
また、育ての親候補は人の良さそうな老夫婦といったところでしょうか?
候補の老夫婦は漢方薬屋さんらしい。
異星人達は、移住可能かの判断材料のデータを現在収集中です。
場合により、異星人達は地球を離れて新たな移住星候補を探索する旅に出なければなりません。
本SFは、題名の通りカグヤ姫を含む異星人達の立場でみた物語です。
さて、かぐや姫が出てくる「竹取物語」ですが、あらためてWikipediaを見てみますと、平安時代に成立した物語で、作者不明で、正確な成立年も未詳とあります。
「源氏物語」の文中にも記述があり、日本最古の物語だそうです。
9世紀後半から10世紀前半頃に成立したとされる、かなによって書かれた最初期の物語の1つだそうです。
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目次
第1章:異星人
第2章:地球
第3章:カグヤ姫(現在)
第4章:求婚
第5章:領主三角(みかど)氏
第6章:カグヤ姫の憂鬱
第7章:帰還
第8章:エピローグ
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(前回まで)
赤子は生まれてすぐに産声をあげるのだが、この子はよく観察すると昼寝をしているように見えた。
竹節の中に居たにも関わらず静かに呼吸ができていた。
さらによく見ると、頭部は透明膜に覆われていて、膜の中身は液体が満たされており寒天様の大小の固体が浮遊していた。
お爺さん達は扱い方が分からなかったので、切り出した竹を乳母車代わりにして宿舎に連れ帰ったのだった。
「さて、これからどうしようか? こんな赤ん坊の状態ははじめてだよ」
「かわいいのう。 竹の中で育っているところを見ると、とても普通の親がいるとは思えない。 しかし、得体が知れないからといって放っておくのもなんだか可哀想だから、取り敢えず家に連れて帰ろうか?お婆さん」
「お爺さん、この子かわいいから育てましょうよ。 赤ん坊を育てるなんて久し振り」
皆であれやこれやと考えを述べるのだが、竹の赤ん坊は静かに寝ていて緊急性がないのである。
袋を被った状態だが、息ができるようなのであえて袋を破る必要もなさそうだし、泣けば空腹かとも思えるが静かなのである。
こうして知らず知らずのうちに時間が経つと、手足を動かすようになり、頭部の袋の中の液体も減ってきて、袋も小さくなって口と繋がっているだけとなっていた。
周囲の一人が気付いたのであるが、袋の中の小さな寒天を赤ん坊が口に入れていたのである。
栄養を摂っているのだろうか?
お爺さんは気付かなかったが、この白い袋に触ったり破ったりすると赤子に対する敵愾心がなくなり、愛情が生まれてくるのである。
袋の表面や内部の気体には目に見えないある因子が含まれており、手に着いたり肺に吸い込んだりすると体内に吸収されて幼い子供を慈しみ育てたいという気が湧いてくるのである。
いわゆるオキシトシンという愛情ホルモンが体内で作られ分泌されるのである。
元々、異星人は進化の過程で生存競争に生き抜く能力を獲得していた。
つまり、例え異種の子供に混じった場合においても、子供は義理の母親に愛情ホルモンを出させることができるのであった。
もちろん、かつての昆虫様の被寄生種生物の場合とは異なっていたが、やはり子孫を慈しむメカニズムが地球人にも働いたのである。
どうも生物は子孫を残す能力を自然と獲得していくものらしい。
(次回に続く)