火星居住基地の怪死

 

SFが読みたい! 2021年版

SFが読みたい! 2021年版

  • 発売日: 2021/02/10
  • メディア: ムック
 

 

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ジム、ジョギング、免疫学の柴里博士(いらすとやより)

 宇宙基地の居住民も健康のために運動します。ただ当然スペースが限られていますので地球の様にはいきません。 夏目田博士もジムに行ったり、ジョギング・ランニングコースを利用してます。

 

 夏目田博士は、原因不明の怪死の究明に新たに免疫学者の柴里博士に共同研究を依頼します。 既に生化学者の外森博士とも共同研究しております。 研究が進み病因が解明されるといいよね!

 

 追記:NASAが2020年7月30日に打ち上げた火星探査機「パーサヴィアランス」が、2021年2月19日に火星に着陸。生命の痕跡調査や地表サンプルの収集、地質・気象の調査を行う予定。 中国の火星探査機も5月に着陸予定。 中国は2020年12月に月面探査機が土壌サンプルを持ち帰って、米ソに次ぐ3番目の国になった。 人口爆発地球温暖化?による災害が報じられる中、地球外への移住が益々現実味をおびてくるように思われる。   

  

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目次

第一章:腫瘍の分離
第二章:火星居住基地での奇妙な死者
第三章:遺族への聴き取り
第四章:グルメクラブへの訪問

第五章:食の調査(以上済んだよ)
第六章:死因の調査(今回)
第七章:ウイルスと病因
第八章:エピローグ

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

・・・ が、また新たな疑問も出てきた。
「D夫人の様に子供の時のグルメクラブでの食事が原因とすると、年配になってから悪影響の出てくるモノってはたして一体何が・・?」

(以上前回まで。) 

 

 多くのグルメクラブ・メンバーに健康上の問題があるわけではなさそうだ。 今の所具合が悪くなっているのはその一部のメンバーじゃないかな。 

 やはりグルメクラブが関係あるなら、クラブ・メンバーの中でも共通の好みのグループができ、その限られたメンバーだけ食べた特別な料理が病死の原因となるってありうるかなあ・・。

 
 A氏とD夫人の生活上の接点も調べたが、食料増産と基地建設の部門の業務はまるで違うから同じ職場で働く機会はないと考えて良いだろう。 

 二人の学生のころの履歴では、基礎授業はリモート・テレワークなので接触はなく、応用授業での共同参加作業と選択クラブ活動における接触も、時期や選択が異なる。   

 就職前のインターンシップでも二人の研修場所は重なっていない。 

 二人共月居住基地で生まれ幼少期に火星に移住したいわゆる“移住組”で、月居住基地から火星居住基地への移住においても、移住船の出発時期が異なっている。

 遺伝的な病気の可能性を考えて、二人の親戚に関して病歴を健康保健センターの個人疾病ファイルで調べてみたが、同じような原因不明の疾患に罹った者はいないようだった。 月基地やさらに地球の医学センターまで、家系を逆上って詳細な調査を依頼しようか、あるいは火星基地で医療ネットワークを芋づる式に家系をできるところまで手繰っていこうか・・。 

 夏目田は、ジョギングの後のクールダウンとしてウォーキングをしている時に、この原因不明の疾患の件があれこれ頭に浮かんできたのだった。 

 夏目田は患者の診療治療を行っているが、まとまった時間がとれると予約したジムで運動し、その後居住基地のジョギング・コースを走ることにしている。 健康のためのルーチン・エキササイズである。 

 

 月でも火星でも有害な生物や物資が持ち込まれないように検疫をパスしなければならないが、調べられる項目は既知のものに対してである。 

 もし未知のものであれば見過ごされるかも・・・。 例えば未知の感染症が見過ごされたなら、感染者の免疫機構が反応しているかもしれない。
 実際、免疫機能の一つに細胞にアポトーシスを起こさせて体から除去する働きがある、つまり細胞に自殺を誘導して体の悪い部分を取り除くのである。 

 

 病因不明の患者で実際にアポトーシスが起こっていたしなあ・・。 夏目田は「未知の感染症の可能性も探ってみるかなあ・・」。


 夏目田は医学部門免疫学ユニットの柴里博士に連絡を取り協同研究を依頼した。 夏目田博士の父は月居住基地の免疫学ユニットの研究者であったので、柴里博士の先輩にあたる。 ただし、夏目田と柴里は近い年代だ。 

 

(次回に続く)

火星居住基地の怪死

 

6600万年の革命 (創元SF文庫)
 

 

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薬と消化不良(いらすとやより)

 

 

 

 夏目田博士の依頼により、病死患者の病因を突き止めるために生化学者の外森博士が共同研究に参加します。 夏目田博士には心強いばかりです。

 

 最初の怪死の患者では、病因がアポトーシスつまり細胞の自殺である可能性が出てきました。 アポトーシス細胞自殺については前回紹介しました。

 

 一方、夏目田博士の医療部門に入院してきた患者で胃腸の調子のよくない方がおり、治療の効果がでなくて精密検査をしてみると・・・・。

 

  

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目次

第一章:腫瘍の分離
第二章:火星居住基地での奇妙な死者
第三章:遺族への聴き取り
第四章:グルメクラブへの訪問

第五章:食の調査(以上済んだよ)
第六章:死因の調査(今回)
第七章:ウイルスと病因
第八章:エピローグ

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・・・ 夏目田の頭の中では、グルメクラブという共通点から食事の関与の可能性が次第に気になり始めていた。 しかしながら、グルメクラブのメンバーが特別な、違法な物を食材に使用しているとは考えられなかった。

  

(以上前回まで。) 

 

  こうして夏目田が病因を探る検討をしている中、入院中のD夫人が胃腸炎で治療の効果が認められずに衰弱しているとスタッフから報告を受けた。 

 

 D夫人は、火星居住基地の拡張計画部門に属しており、月居住基地内の火星移住希望者について月基地担当部門との情報交換や、受け入れの新火星居住地区の建設を調整する担当グループメンバーであった。 

 最近担当している業務が忙しくて、食欲不振は疲労がたまったせいかなと思っていた。 __そういえば年1回の定期健診もいつもより遅くなったなあ。 

 

 業務が一段落したところで医薬部門を訪れ、消化不良胃腸に炎症が見つかった。 最初は通院していたが、薬で改善が見られなかったので入院して治療ということになったのだ。 

 グルメクラブのメンバーのリストにD夫人の名前はなかったので思いも寄らなかったが、付き添い家族の実姉との面談の最後に夏目田が「グルメクラブについて何か聞いたことありますか?」と尋ねると、
「そういえば父親がグルメクラブ、そんな名前だったかな? そのメンバーで、本人が子供の頃にメンバー家族として父親が連れて親睦会に参加してたようでした」

と古い記憶を思い出しながら

「妹は小さい頃に父親が大好きで、よく付いて回っていた時期がありましたね。 ただし、本人はクラブそのものに興味があったわけでなく、今までクラブ・メンバーになったと聞いた覚えはありませんね」


  夏目田博士と外森博士は、D夫人の通常検査に特に異常はなかったため胃腸の組織を採取して調べることにした。 具合の悪い所を詳しく調べようということである。 消化管内カメラで胃腸の粘膜、つまり通過する食物と接する面の組織から、体に負担がかからない程度に異常部位の少量の組織を掻き取るのである。 

 組織の顕微鏡拡大像においては、死細胞とそれをおそらく除去しようとする炎症細胞が若干多いように見られた。 また、おそらく死細胞においてと思われるが、機能面では細胞の自殺活性が比較的高目になっていた。 しかし、細胞に毒性を示すような重金属蓄積や病原菌は見つからなかった。 

 夏目田博士には、可能性を消去していくと食事の関与の可能性がどうしても拭いきれなく、疑うとすれば食物材料か調理中の混入物の何かが死亡の原因ではと推察されたが、また新たな疑問も出てきた。
「D夫人の様に子供の時のグルメクラブでの食事が原因とすると、年配になってから悪影響の出てくるモノってはたして一体何が・・?」

 

 

(次回に続く)

火星居住基地の怪死

 

 

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外森博士(いらすとやより) と 細胞自殺(アポトーシス、mふじと画)

上図: 「今回登場する生化学者の外森です。 
 夏目田博士の依頼により、病死患者の病因を突き止めるために共同研究に参加します。

 着ているのは和服です。先祖が地球の日本人で、譲り受けて月基地へ、さらに私が譲り受けて火星基地に大切に保管してあります」

 

 

下図: 細胞死には、ネクローシス(細胞壊死)とアポトーシス(積極的、機能的細胞死)の2種類がある。 

 アポトーシスとは、いわば細胞の自殺である。 画に示すように、正常細胞には中心にDNAを含む核があり、その核内で濃縮が起こり、次いで細胞内に分散していく。 

 生物が健全性を保つために必要で、個体が発生する時に臓器や組織の余分な細胞の除去、癌化細胞の除去、内部異常の細胞の除去、自分の体を攻撃する免疫細胞の除去において認められる。 したがって、アポトーシスが正常に起こらないと神経変性疾患、癌、自己免疫疾患などの異常が起こる。 

 アポトーシスには細胞の中の酵素であるカスパーゼが働く。

 

  

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目次

第一章:腫瘍の分離
第二章:火星居住基地での奇妙な死者
第三章:遺族への聴き取り
第四章:グルメクラブへの訪問

第五章:食の調査(以上済んだよ)
第六章:死因の調査(今回)
第七章:ウイルスと病因
第八章:エピローグ

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・・・ 夏目田は、元来医学研究目的であった担癌動物システムが、地球からの食糧供給がほぼ絶たれた月居住基地において、どのような経緯で食料供給策の開拓においても利用されたか調査し始めた。 

 そもそも限られたスペースの移住基地での牛豚のような大型家畜の飼育は、無理なのである。

  

(以上前回まで。) 

 

 

第六章:死因の調査

 

 月及び火星居住基地での死因不明の遺体は原因究明のための後日の分析用に保存される。 

 限られた居住空間で限られた数の人類が生存していくためには、死因は解明されなければならない。 死因が解かれば対処法も考えられ、同じ病人が出た場合に居住民の生命を救える可能性が高められる。 地球外での人類の生存を継続していくためには、惑星基地の居住民の全滅は絶対に防がねばならない。 健康な居住民に次々と広がるような病気は原因を究明し、遮断しなければならない。 

 

 夏目田博士は死因究明のため、生化学者の外森博士に共同研究を依頼した。 病死した患者体内の各種生物活性を調べ、異常な点があれば病因を絞り込むのに役立てようということだった。 

 まずA氏の遺体を調べた場合には、傷害の見られた臓器の細胞内部では自殺活性が高くなっていることが見つかった。 

 実は、細胞の自殺は生物の体の中で不要になった細胞が除去される重要なメカニズムであり、それにより健全性が維持される。 つまり、生物個体の発生における臓器・組織の余分な細胞の除去、癌化細胞や内部異常の細胞の除去、自分の体を攻撃する免疫細胞の除去などである。 従って、正常な細胞自殺が起こらないと体に様々な異常が起こってくる。 

 A氏の場合には、細胞自殺の誘導に関係している一種の酵素の活性も異常に高くなっていた。 つまり、何らかの理由で臓器を構成する細胞が自殺した結果、その臓器の機能が働かなくなりA氏は死亡したのではないかと推測された。 

 この可能性を検討するために、夏目田と外森両博士はB氏及びC氏の遺体の臓器サンプルの分析依頼を月基地当局に申請した。 B氏とC氏の病因がA氏と同じであれば、やはり傷害のあるB氏とC氏の臓器の細胞自殺活性や関連した酵素活性が高くなっているはずである。

 

 臓器に傷害を起こす原因物質として、重金属のような中毒物質や食中毒菌からの毒素も可能性があったが、臓器サンプル中には毒性物質は検出されなかった。 つまり、重金属と細菌性食中毒はA氏の臓器傷害の原因の可能性からはずしてもよさそうである。

 

 夏目田の頭の中では、グルメクラブという共通点から食事の関与の可能性が次第に気になり始めていた。 しかしながら、グルメクラブのメンバーが特別な、違法な物を食材に使用しているとは考えられなかった。

 

(次回に続く)

火星居住基地の怪死

 

 

SFマガジン 2021年 02 月号 特別増大号

SFマガジン 2021年 02 月号 特別増大号

  • 発売日: 2020/12/25
  • メディア: 雑誌
 

  

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動物による抗癌剤スクリーニング試験(mふじと画)

 

  まずは、あけましておめでとうございます

 本年も当ブログを楽しんでいただければ幸いです。よろしくお願い申しあげます

 

 さて、コロナ禍が世界的に治まる様子がなく、ワクチンが承認され始め接種が始まりました。それに伴い副作用例も報告されるようになってきました。 

 本来なら、ワクチン候補の毒性、有効性など段階的試験を実施して薬として認可可能かどうか判定していくべきなのでしょうが、いかんせん世界的な感染者数の右肩上がり、当然それに伴う死者数増が加速している緊急事態です。試験が同時並行のようになっても致し方ないですね。

 感染力の強い変異型ウイルスも出てきているそうなので、認可されたワクチンが同時に有効であってほしいですよね。有効なワクチンが世界中あまねく行き渡るようになるまでは、自身のためだけでなく、いろいろな事情で抵抗力が落ちている他の人の健康のためにも、まずは3密を避けるよう心がけましょう。

 

 ところで、ワクチンの話から入りましたが、今回のブログの内容において抗癌剤を開発する時の一部の試験の話がちょこっと出てきます。わかりやすくするつもりで上記のような絵にしてみました。

 は正常であった体の一部が、持ち主?の都合を無視して増え続け、ついには正常な部分を圧迫して本来の機能ができなくして死に至らしめる病気です。

 抗癌剤には癌細胞に直接働いて増えるのを邪魔するタイプのものがあります。しかし、いくら試験管内の癌細胞をやっつけても、正常細胞や患者にも副作用があればダメです。

 もちろん、いきなり癌患者で試験をするわけにもいきませんので、ヒト癌細胞を移植した小動物(小さなスペースで飼育できるマウスのようなげっ歯類など)で試します。動物に副作用がなく癌細胞がなくなればよいわけです。正常動物は移植を拒絶するので癌は大きくなれませんが、移植可能動物は免疫機能に欠陥があり拒絶できなくて癌は大きくなります。移植可能動物は感染抵抗力も弱いので清浄区域で飼育します。

 ちなみに、癌細胞に作用するのではなく免疫力を強化することにより癌細胞を排除するタイプの抗癌剤で、最近有名なのが一般名・ニボルマブ(商品名・オプジーボです。開発の業績により京都大・本庶佑先生にノーベル賞が与えられました。

 

 絵は参考になったかなあ?

 

  

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目次

第一章:腫瘍の分離
第二章:火星居住基地での奇妙な死者
第三章:遺族への聴き取り
第四章:グルメクラブへの訪問(以上済んだよ)
第五章:食の調査(今回)
第六章:死因の調査
第七章:ウイルスと病因
第八章:エピローグ

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・・・月居住基地の食品衛生対策として、地球からの生物の持ち込みには宇宙ステーションにて検疫を義務付けており、原則として口にする食事は加熱処理されている必要があった。  

 

 調査を進めると、少量生産であるが月基地で開発された食肉供給システムが見つかった。

 

(以上前回まで。今回は「第五章:食の調査」途中から) 

 

 

 

 

 他種動物の肉の細胞先天的な免疫異常移植拒絶できない小動物に移植して肉の細胞を成長させ、肉塊となったところで取り出すシステムである。 

 

 このシステムは、当初死因のトップの癌を研究するために居住基地に持ち込まれた。  

 癌研究において、凍結保存されていた種々の癌細胞や癌組織に対する抗癌剤候補の治療効果の評価のために、ヒト癌患者のモデルである癌移植動物が利用された。 

 癌細胞を移植されると免疫異常の動物は拒絶できずに体内で癌が成長し大きくなるが、動物に有力な抗癌剤候補を投与すると副作用が少なく癌の成長を抑えられるのである。 試験管内での抗癌作用の評価より、より人体内に近い状態での抗癌効果を評価できるのである。 

 動物は取り扱いやすさから、通常小型齧歯(げっし)類である。 医学研究者である夏目田博士は、この担癌動物による薬剤評価システムの医学的意義を当然熟知していた。 

 

 夏目田は、元来医学研究目的であった担癌動物システムが、地球からの食糧供給がほぼ絶たれた月居住基地において、どのような経緯で食料供給策の開拓においても利用されたか調査し始めた。 

 そもそも限られたスペースの移住基地での牛豚のような大型家畜の飼育は、無理なのである。

 

(次回に続く)

火星居住基地の怪死

 

 

f:id:herakoimFujito:20201225171959p:plain汚れた地球(いらすとやより)

   f:id:herakoimFujito:20201225172011p:plain月(いらすとやより):地球の衛星

   f:id:herakoimFujito:20201225172030p:plain火星(いらすとやより):お隣の惑星

 

 

 本SFの設定では、人口爆発や環境汚染で人類は地球外に居住地を求めます。 

 最初地球を周回する衛星のに、次いでお隣の惑星である火星に居住基地を建設します。 

 現実の世界を見ると、人間の活動が一因?かもしれない地球温暖化により住みづらい環境になっていっているように思われます。

 一方、将来の人類の生存を危惧してか地球外の星の探査が盛んになっています。

 月面探査に中国が参入しましたし、太陽系惑星探査においても火星に水が存在する可能性が示めされており、さらにアメリカでは民間によるロケット打ち上げに成功し宇宙ビジネスが加速されそうです。

今年11月に打ち上げ成功したアメリカ・スペースX社開発の新型宇宙船「Crew Dragon (クルードラゴン)」には、日本人のベテラン宇宙飛行士である野口聡一さんアメリカ人3人が搭乗していました。

 

 さて、今回は本年最後のブログ更新となります。

 ご覧いただきありがとうございました。

 引き続き来年度も楽しんでいただければ幸いです。

 それでは、良いお年を!

 

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目次

第一章:腫瘍の分離
第二章:火星居住基地での奇妙な死者
第三章:遺族への聴き取り
第四章:グルメクラブへの訪問(以上済んだよ)
第五章:食の調査(今回)
第六章:死因の調査
第七章:ウイルスと病因
第八章:エピローグ

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・・・・・・・大型家畜の地球からへの移動や限られた基地空間での飼育は重量や飼料を考えると無理なので、居住基地への移住は小動物に限られたはずである。 

 居住民の地球時代の肉食習慣は変え難く、要望に応えて現在出回っているのはせいぜい小動物の肉である。 

地球の味」で食していられるのは、加工技術の進歩の賜物である。 

 牛肉風や豚肉風食材を使っているのである。

 

(以上前回まで。今回は「第五章:食の調査」途中から) 

 

 ついで夏目田は、基地情報ネットワークにアクセスして居住基地の「食品生産」について調べ始めた。 

 

 工場生産が行われているのは植物、キノコなどの菌類、昆虫、小型魚、鳥そして小型哺乳類である。 

 基地での食料確保のため、これら生物は優先的に宇宙ステーション経由で地球から運搬された。 

 やがては徐々に生物種を増やそうとの計画であったが、地球での自然破壊や核戦争などによる環境汚染により原則輸入不可となった。 

 地球のように牛豚といった大型家畜の畜産品を食する機会は失われた。 

 それ故、肉食習慣を捨てきれない居住民のために小動物の肉が供給されていた。 

 流通量は少ないので値段は高く、庶民が日常的に食べるものではない。 

 居住基地生まれの世代では、植物や昆虫が蛋白源として定着している。 

 

 なお、居住基地の食品衛生対策として、地球からの生物の持ち込みには宇宙ステーションにて検疫を義務付けており、原則として口にする食事は加熱処理されている必要があった。  

 

 調査を進めると、少量生産であるが基地で開発された食肉供給システムが見つかった。

 

(次回に続く)

火星居住基地の怪死

 

 

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(それぞれ いらすとやより)

 

  人口爆発や環境汚染で人類は地球外に居住地を求めます。 最初月に、次いで火星に居住基地を建設します。 しかし、何でも居住基地に持っていくことはできません。例えば食料の場合だと、牛、豚、大型魚などは宇宙船の運搬スペースや居住基地での飼育環境の建設を考えると容易ではありません。 科学の進歩を待ちましょう。 とりあえず限られたものを利用するしかないのですが、持ち出したもので居住基地で生産できないようなものは、高価で入手困難となります。 大量生産可能な食材で、地球の何とかモドキの味などが色々開発されるかも。

 

 

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目次

第一章:腫瘍の分離
第二章:火星居住基地での奇妙な死者
第三章:遺族への聴き取り(以上済んだよ)
第四章:グルメクラブへの訪問(今回)
第五章:食の調査(今回)
第六章:死因の調査
第七章:ウイルスと病因
第八章:エピローグ

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・・・再現メニュー料理だろうか、料理の映像を見ると、すき焼きのような鍋料理やハンバーガー、ホットドッグやピザなど。 
「当時は、まだ地球からの運搬食材もあったろう。 ファーストフードでも懐かしく人気があるんだなあ」

(以上前回まで) 

 

火星居住民の食事は、注文し配送された冷凍食品を温めたりフリーズドライ食品に湯を加えて戻して食べる。 調味料で個人の好みに味付けし食べるのが一般的だ。 

 

「それに比べやや歴史のある居住基地区では、食材を選択し自分好みの料理を作るような住民もいるようだ。 この居住基地での映像では、凝った料理を作っている。 さすが食通、たいしたものだ」

 

「おや、この映像の料理には“ユッケ”とか“馬刺し”とか、またこちらは“レバ刺し”との表示が付いているが、植物蛋白を使ってるのかな? それともグルメだから肉かな?」 

 

グルメクラブ事務局やメンバー数名に尋ねると、
基地でのクラブ創設来、食材はメンバーの努力で見つけ、基地食品法に則り調理を工夫している。 肉や昆虫は当初から現在に至るまでも加熱処理食材の範疇にあるが、食習慣が長くなると“地球の刺身”のような食品を好むメンバーもいた。 食中毒や感染症のリスクは頭にあったと思うが、地球での食体験の記憶は忘れがたいものかも」
とのことだった。

 

第五章:食の調査

  居住基地では肉料理も食べられたかもしれないので、夏目田博士は動物性食品について調べてみた。 

  牛豚といった大型家畜の地球からへの移動や限られた基地空間での飼育は重量や飼料を考えると無理なので、居住基地への移住は小動物に限られたはずである。 居住民の地球時代の肉食習慣は変え難く、要望に応えて現在出回っているのはせいぜい小動物の肉である。 「地球の味」で食していられるのは、加工技術の進歩の賜物である。 牛肉風や豚肉風食材を使っているのである。

 

 

(次回に続く)

火星居住基地の怪死

 

 

SFマガジン 2020年12 月号

SFマガジン 2020年12 月号

  • 発売日: 2020/10/24
  • メディア: 雑誌
 

f:id:herakoimFujito:20201129183418j:plain(mふじと画)

  最初の怪死患者に会った医師の夏目田は、病因を探り始めて遺族に聴き取りを開始しました。その時に前回”グルメ”という言葉がでてきました。

  限られた空間の居住基地では、多くの人は食堂で画のような自販機の少ないメニュから選んで食事をします。食事は選択パネルにタッチするとフリーズドライに湯を加えたものが配膳口にでてくるので、自分のトレイにとります。衛生上食品加熱処理されています。しかし、食に興味がある一部の”グルメ”の人はこんな単純なメニュに堪えられますかねえ? もちろん食材も地球の様にはいきません。はたして、どんな工夫が・・?

  ちなみに人物名や画の表示に地球時代の日本文化は火星でも残っていますが、居住民の出身は様々なので共通言語が使われています。物語を分かりやすくするために日本語を使ってます。

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目次

第一章:腫瘍の分離
第二章:火星居住基地での奇妙な死者
第三章:遺族への聴き取り(以上済んだよ)
第四章:グルメクラブへの訪問(今回)
第五章:食の調査
第六章:死因の調査
第七章:ウイルスと病因
第八章:エピローグ

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・・では、海産物を食べたことがないし肉も高級品で口にする機会も少ない。 そのためかグルメクラブとかいう同好会に入って、同じ食経験のある同年配の人達と食卓を囲み昔話を楽しんでいたようです」

とC氏の娘。

(以上前回まで) 

 

第四章:グルメクラブへの訪問

  B氏とC氏が月居住基地のグルメクラブのメンバーであったと耳にした夏目田は、月基地のグルメクラブの活動について少し調べてみることにした。  ホームページによると、火星基地グルメクラブの所在地は文化活動 センター内にあり、共用施設で定期・不定期の集会を催していた。 

  夏目田博士は月基地のグルメクラブについて何か情報を得られればとセンター事務局に連絡し、グルメクラブの集会の見学や、クラブメンバーとの面談に出かけた。

 

  センター事務局にあるグルメクラブの公開資料を見せてもらった。 クラブ発足以来の活動記録であった。 ちなみに、2XXX年X月の月基地での定期集会の動画ファイルのタイトルは「地球の懐かしの味」であった。 2YYY年Y月の火星基地の集会のタイトルは「昆虫の新作料理」であった。 集会毎にタイトルは変わるそうだ。 

  グルメクラブは、歴史が古く月居住基地にて結成され現在に至っている。 月居住基地メンバーが、火星へ移住しグルメクラブ火星支部を運営している。 月居住基地メンバーの方には当然年配者が多く、地球での実体験があるせいか地球の懐かしい味への郷愁は強いようだ。

  動画には集会以外に親睦会のもあり、月居住基地におけるクラブの親睦パ―ティーでは、料理を囲みながら談笑しているグループが映っている。 卓上には懐かしの地球の再現メニュー料理だろうか、料理の映像を見ると、すき焼きのような鍋料理やハンバーガー、ホットドッグやピザなど。 
「当時は、まだ地球からの運搬食材もあったろう。 ファーストフードでも懐かしく人気があるんだなあ」

 (次回に続く)