火星居住基地の怪死

 

SFショートショート (手塚治虫からの伝言)

SFショートショート (手塚治虫からの伝言)

  • 作者:治虫, 手塚
  • 発売日: 2020/03/25
  • メディア: コミック
 

 f:id:herakoimFujito:20200909155642p:plain(いらすとやより)

独り言:何故牛かって?今回出てくるよ。

 

目次

  • 第一章:腫瘍の分離
  • 第二章:火星居住基地での奇妙な死者
  • 第三章:遺族への聴き取り
  • 第四章:グルメクラブへの訪問
  • 第五章:食の調査
  • 第六章:死因の調査
  • 第七章:ウイルスと病因
  • 第八章:エピローグ

 の予定です。 (以上前回まで)

 

  • 第一章:腫瘍の分離

 19XX年にある国の牧場で一頭の病牛が見つかった。元気そう失で背部に腫瘤があり、獣医により腫瘍が疑われ、家畜衛生試験所にて詳しい検査を受けることになった。
 「筋肉の良性腫瘍だが、他の部位への転移はなく、牛の生命を脅かすほどではなさそうだ。 稀な疾患なので、研究用に細胞培養と検査用の組織サンプル保存をしておこう」
 こうして、培養液の中で増殖可能となった腫瘍細胞は、研究者の興味を引く研究対象とは中々ならず凍結保存されたままになって年月が経っていった。 後年の遺伝子解析技術の大幅な進歩により分析対象となったが、遺伝子の小変異は認められるものの死をもたらすような悪性腫瘍となる可能性は少ないと判定されることになる。

 

  • 第二章:火星居住基地での奇妙な死者

 2XXX年において人類は既に火星に居住空間を建設していた。 人口爆発や環境汚染により地球外に居住空間を求めた人類は、まず月に居住基地を建設して住むようになり、約40年経ち2万人程までとなった。地球と月の間では人、物の行き来があったが、月での定住が安定してくると、人類は約20年前より、月から火星にさらに新居住空間を求めて移住した。 

 現在、火星への居住者は2千名に達しようとしていた。 しかしながら、母なる地球は自然破壊や核戦争による環境汚染が進み、汚染物の持ち込みを防ごうと地球と月の間の人や物資の行き来は次第に小さくなった。

(次回に続く)