火星居住基地の怪死
本ブログの「火星居住基地の怪死」では、宇宙での食事が怪死の原因として関与の可能性が次第に大きくなっています。
想像されるように、地球での当たり前の食材を地球外での居住基地で同じように利用するのは困難です。
大型の家畜や魚類を運搬が大変ですし、飼育や養殖するには大型施設が必要です。 生物なので飼料や排泄物等の処理の施設も不可欠です。
そこで、居住基地の人々は居住環境に負担をかけない食材を利用せざるを得ない訳です。
ところで、最近のニュースを見ると、アメリカで代替肉の使用が増加しているとの内容が目に付きました。
「代替肉」「アメリカ」で検索してみると、企業が市場を牽引してきたビヨンド・ミートやインポッシブル・フーズといった企業に、既存の大手企業が参入して来ているそうです。
豆類などの植物性の原料を使用している「代替肉」製品を店頭で販売しているそうです。
Googleやミクロソフトのビル・ゲイツ氏、俳優のレオナルド・ディカプリオ氏などの著名人も出資しているそうです。
なお、「火星居住基地の怪死」にも取り上げました「培養肉」ですが、実際にオランダの生理学者が動物の筋肉の幹細胞を取り出し、培養することで開発した「培養肉」の試食会が持たれたようですが、やはりコストが高いためか、まだ店頭にはならんでいないそうです。
「代替肉」や「培養肉」のステーキやハンバーガーはどんな味がするのでしょうか? 試食してみたいですね。 ニュースでは、悪くない味らしいです。
最近のコロナウイルス感染や自然災害で多数の死者が出ていますが、長期的に見ると地球の人口は増加の一方です。
つまり、生存に必要な食料量も当然増加する一方となります。
来たるべき、いやもう来ているのかもしれませんが食糧難を憂慮して地球外への移住といった対応を既に始めている動き(月、火星の探索)ともとれるんですがねえ。
なお、「火星居住基地の怪死」もいよいよエピローグです。
もう少しで終了しますが、ここまで読んでくださっている読者の方々にはひたすら感謝です。
終了後には、新しく「竹取物語」のカグヤ姫を宇宙人説として、SFショート「SFカグヤ姫ストーリー(仮題)」を始めようかと考えています。
その節にはまたよろしくお願いします。
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目次
第一章:腫瘍の分離
第二章:火星居住基地での奇妙な死者
第三章:遺族への聴き取り
第四章:グルメクラブへの訪問
第五章:食の調査
第六章:死因の調査
第七章:ウイルスと病因
第八章:エピローグ(現在はここ!)
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グループの報告会で共同研究の成果が得られ、治療にも目処が立ちそうで、参加研究者は和気あいあいと散会した。
今後も機会があれば、グループ参加研究部門が相互支援していくことで合意した。
(以上前回まで。)
第八章:エピローグ
夏目田博士は、月基地の医薬センターへ病因不明者におけるウイルス検査を依頼した。
病人は、体から検査のために組織の一部を採取されるが、居住基地では病人の生死に関わらず、後日の検査あるいは研究のために保存ざれていた。
新たな居住空間で人類が生存していくためには、医学的管理の充実は大きな意義がある。
月基地での古いサンプルを再検査した結果は夏目田へ報告されたが、それによると6名中4名から変異ウイルスが検出されたとのことである。
この結果を受けて、全基地居住区民には、原則として肉食の場合には安全性の面から充分加熱処理することが健康管理部門から再通達された。
D夫人は抗ウイルス薬の投与により病気の進行が遅くなったが、残念ながら多臓器への病変の拡大で死去した。
薬物投与後でも細胞死(アポトーシス)が観察されたことから、ウイルスの増殖は抗ウイルス剤で抑制されたものの、細胞死のプロセスを止めることはできなかったと考えられた。
あるいは、ウイルス感染が正常組織で既に広がっており、薬物投与が結果として遅れてしまった可能性もあった。
ウイルスに取り込まれていた遺伝子はウシの酵素に似ているため、ウシ細胞、つまり移植細胞に由来する遺伝子をウイルスが取り込んだことが推測された。
しかも、変異したウシ遺伝子が取り込まれており、感染細胞内で活性型の酵素がどんどんつくられるようになっていた。
この酵素の働きをコントロールできれば、治療に結びつくかもしれない。
発症メカニズムの解明が早ければ、より早い治療でD夫人は治癒に向かったかもしれず悔やまれた。
D夫人の家族はしばらくして遺品の整理をしていた。
「D夫人の幼い頃の映像もあるね。 お父さんに連れられてパーティーに参加しているようだ。 この映像には“グルメクラブ・パーティー会場”の表示も映っている。 さすがグルメクラブだけあって、テーブル上には御馳走がたくさん並んでいるね」と親戚の一人。
ただ、こうした映像を見ている遺族には気が付かないこともあった。
(次回に続く)