SF異星人カグヤ姫物語

 

 

SF作家の地球旅行記

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左図:愛情 中図:栄養剤 右図:ホクロ (いずれも”いらすとや”)

 

 カグヤ姫養父母を探していた異星人達により、何年も前に周到に用意された計画があり、異星人の思惑通り老夫婦により異星人の赤ん坊は引き取られました。 

 異星人カグヤ姫は地球人そっくりに擬態できる能力がありましたが、さらに元来は寄生種であるため被寄生種の親に愛情をもって育ててもらわなければなりません。 

 被寄生種に愛情を生み出させるような何か因子を異星人は持っている?

ちなみに、哺乳類では愛情ホルモンとしてプロラクチンが知られています。

 

 事前調査で地球人の食材は異星人に毒性は無さそうでしたが、はたして実際は?

 念のためカグヤ姫は濃縮栄養剤を持参し、人知れず併用していきます。

 

 地球人の赤子そっくりですが異星人の赤子は発達が早く、自分の体内に埋め込まれた小型通信機、実はホクロにみえるのですが、これを通して内密に異星人スタッフと連絡を取ります。

 

 

  本SFショートではカグヤ姫異星人として描かれています。 

  この異星人は、地球で言えば昆虫に似た生物です。 

  しかも、彼らの住む星では全く異なる2つの生物より成る社会を作っています。 

  1つは大部分を占める生物(被寄生種)ですが、もう1つは少数派で多数派の生物に気付かれないように擬態の能力により多数派に紛れて生存(寄生)しております。 

  カグヤ姫は少数派の(寄生種)生物に属します。

 

 

  カグヤ姫達異星人は、故郷の星が環境破壊などで住みづらくなり、一部は他の星での生存を期待して故郷の星を出発しました。  

  しかしながら、移住船での居住星の探索の旅の途中に仲間を感染症で失います。

  残ったカグヤ姫達の生残には、ライフサイクルの維持に不可欠なパートナーと成りうる(被寄生種)生物を見つけないといけません。

  つまり、失った仲間がやってくれていた子孫の生育を、かわりに地球人の手を密かに借りようと企てます。 

  勿論、異星人の擬態能力で外見は地球人です。

 

  育ての親候補として人の良さそうな老夫婦が選ばれた訳ですが、果たして異星人達が目論むようにカグヤ姫は育っていけるのでしょうか?

      

  異星人達は、世界中に出されたカグヤ姫のような里子達が、幸福な生活を送れるように願いながら観察を継続していきます。 

  何故なら場合により、異星人達は地球を離れて新たな移住星候補を探索する旅に出なければなりません。

 

  本SFは、題名の通りカグヤ姫を含む異星人達の立場でみた物語です。

  さて、かぐや姫が出てくる「竹取物語」ですが、あらためてWikipediaを見てみますと、平安時代に成立した物語で、作者不明で、正確な成立年も未詳とあります。

  「源氏物語」の文中にも記述があり、日本最古の物語だそうです。

  9世紀後半から10世紀前半頃に成立したとされる、かなによって書かれた最初期の物語の1つだそうです。

 

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目次

第1章:異星人

第2章:地球

第3章:カグヤ姫(現在はこちら!

第4章:求婚

第5章:領主三角(みかど)氏

第6章:カグヤ姫の憂鬱

第7章:帰還

第8章:エピローグ

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(前回まで)

 

村の住人は少し離れた、人間がより多数で住んでいる”町“へ物々交換するためにたまに行くようである。 

町や村への移動は徒歩や、家畜と言う他の生物を利用して行き来している。 

人間同士の争いでは刀と言う武器で相手を殺してしまう残忍さがある。 

ただ、すべての人間が刀を使用するわけではなく、本来多くの人間は好戦的ではないようである」というような事。

 

 

  老夫婦一行はの通りに入り、やがて見慣れた御近所の家屋が目に入り、ついには老夫婦の屋敷の門をくぐった。 

  荷車の荷をほどくのは使用人と弟子に任せ、老夫婦は留守を任せていた使用人達に赤ん坊を連れてきた経緯を簡単に話し、家の方の受け入れ準備を命じた。 

  使用人達は予想外の事で少なからず驚いたが、老夫婦の幼いを受け入れたことがあり、その時の対処を思い出しつつ準備した。 

 

  家に連れ帰られた赤子を触ったお婆さんにも、赤子から皮膚を通して愛情ホルモンという因子が入っていった。 

  異星人の分泌するホルモンだが、地球人に対しても同じ作用を示した。 

  他生物への寄生がライフサイクルに入っている異星人には、生存のためには進化上不可欠だったのかもしれない。

  「お爺さん、この子かわいいから育てましょうね。 

  大きくなったらどんな娘になるか楽しみだわ。 

  見てみたいから私達も元気でいなくっちゃあ」

 

  こうして異星人の赤子は地球人に受け入れられたが、外見上は地球人の赤子によく似ていた。 

  愛情ホルモン以外、さらに異星人は周囲の義兄弟姉妹に見かけ上外観を似せることができる擬態という能力も持っていた。 

  こうした能力を駆使して、赤ん坊はお爺さんとお婆さんに受け入れさせたのである。

 

  赤ん坊はあまり食物をとらないにもかかわらず元気であった。 

  竹の中に、万一地球上の食物が有害となった場合に備えて、竹の中に濃縮栄養剤を同封されていたのであるが、異星人の体内には構造上食物を保存できる場所があった。 

  例えれば、地球の動物のげっ歯類、ハムスターとかリスのような頬袋みたいなものである。 

  勿論、異星人の場合の貯蔵場所は、外見上容易にはわからない。 

  異星人スタッフにより、地球人の一般の食事材料に関してはその毒性については特に事前試験調査されていたのであったが。 

  地球の食材を分析すると化学構造上は栄養成分として可であったが、調査員第一号の異星人の赤子としての重要な成長期への悪影響があれば最小にしたいということで、異星人の栄養剤を併用することにした。 

  お爺さんとお婆さんは勿論気付くはずもなかった。

 

  さらに、異星人は極小さな通信機を卵に注入した後に、卵を竹の中に移植したのだった。 

  地球人に引き取られた中で、異星人の赤子が異星人スタッフに直に連絡を取りたい場合に備えてだった。 

  まずは、地球の離乳食上でのトラブルの可能性があったが、幸い取り越し苦労で済んだ。 

  地球人の赤子のイメージと異なり、孵化後すぐ異種生物が周囲にいてその中を生き抜かねばならない異星人の赤子は、かなり発達した状態で生まれてくる。 

  生まれつき、既に簡単なコミュニケーションはとれるのだ。

  お爺さんとお婆さんには、この通信機は腕にある小さなホクロとしか見えなかった。 

  いや、老眼の老夫婦はホクロにも気づかなかった。 

  しかし、赤子ながら異星人が途中経過を異星人スタッフにホクロを通して報告した際に、偶然スダレ越しに「カグヤ、カグヤ」と産声を耳にしたお爺さんは娘をカグヤ姫と名付けることにした。 

  耳にした「カグヤ」とは、実は娘が自分のホクロ状の埋め込み型通信機を通して、通信相手の異星人サポート員への呼び掛けの声だったのである。 

 

 

(次回に続く)