SF異星人カグヤ姫物語
異星人(カグヤ姫)は、職業上定例の薬草採取に来ていた老夫婦一行に偶然竹の中に見出されました。
しかし、この偶然の出会いは、カグヤ姫の養父母を探していた異星人達により何年も前に周到に計画されたものだったのです。
異星人のスタッフは季節柄地球人の興味を引く螢の発光に目をつけました。
つまり、蛍狩りの地球人の目を引くように異星人のいる竹が螢のように発光するような仕組みにしたのです。
手付かずの自然に恵まれた時代の螢の群れは、どれほど大群だったでしょうか?
また、灯がそれほど明るくない時代の漆黒の闇の中で、熱くない小さな光の集まりが山河沿いに大きな渦を作って揺れ動くダイナミックな様を、目の当たりにできた当時の人々は何と羨ましいことでしょう。
そうして、異星人の思惑通り老夫婦により異星人の赤ん坊は引き取られました。
本SFショートではカグヤ姫は異星人として描かれています。
この異星人は、地球で言えば昆虫に似た生物です。
しかも、彼らの住む星では全く異なる2つの生物より成る社会を作っています。
1つは大部分を占める生物(被寄生種)ですが、もう1つは少数派で多数派の生物に気付かれないように擬態の能力により多数派に紛れて生存(寄生)しております。
カグヤ姫は少数派の(寄生種)生物に属します。
カグヤ姫達異星人は、故郷の星が環境破壊などで住みづらくなり、一部は他の星での生存を期待して故郷の星を出発しました。
しかしながら、移住船での居住星の探索の旅の途中に仲間を感染症で失います。
残ったカグヤ姫達の生残には、ライフサイクルの維持に不可欠なパートナーと成りうる(被寄生種)生物を見つけないといけません。
つまり、失った仲間がやってくれていた子孫の生育を、かわりに地球人の手を密かに借りようと企てます。
勿論、異星人の擬態能力で外見は地球人です。
育ての親候補として人の良さそうな老夫婦が選ばれた訳ですが、果たして異星人達が目論むようにカグヤ姫は育っていけるのでしょうか?
異星人達は、世界中に出されたカグヤ姫のような里子達が、幸福な生活を送れるように願いながら観察を継続していきます。
何故なら場合により、異星人達は地球を離れて新たな移住星候補を探索する旅に出なければなりません。
本SFは、題名の通りカグヤ姫を含む異星人達の立場でみた物語です。
さて、かぐや姫が出てくる「竹取物語」ですが、あらためてWikipediaを見てみますと、平安時代に成立した物語で、作者不明で、正確な成立年も未詳とあります。
「源氏物語」の文中にも記述があり、日本最古の物語だそうです。
9世紀後半から10世紀前半頃に成立したとされる、かなによって書かれた最初期の物語の1つだそうです。
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目次
第1章:異星人
第2章:地球
第3章:カグヤ姫(現在はこちら!)
第4章:求婚
第5章:領主三角(みかど)氏
第6章:カグヤ姫の憂鬱
第7章:帰還
第8章:エピローグ
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(前回まで)
寄生種は自分達の仲間を認識できるのである。
繁殖期には子孫の卵や幼生を被寄生種の集団に潜り込ませるというサイクルである。
日本に着いた探査船からは、幼生の段階で地球人の社会に潜り込ませようとの計画が立てられた。
異星人の選抜された卵を地球人にどうやって興味をわかせ、持ち帰らせるか?
そのまま地上に置けば、鳥類や爬虫類の卵に間違われ興味を惹かないかもしれないし、そもそも動物の餌となるかもしれない。
卵の安全のためには何かの中に隠せれば良いのだが、木の洞の中では目立たないし、地球人が取出す時にも破損しないで取出すのも難しそうだ。
その際に一人のスタッフが竹という植物の利用を提案した。
竹は地球人に好まれ、しかも中の空間は決まった円筒形の空間があり簡単に割れる。
目印の付いた一節を切り出すには、地球人のナタや刀で切り刻む必要がなく、最少の切り口で節内を開けることができる。
倭人の竹細工のための竹の取り扱い方は、スタッフにより観察されていたのだ。
さて、次に異星人の卵が入った竹に地球人の注目する目印をどう付けるかだが、後に異星人の科学技術(遺伝子操作)、生理機能(地球人の接近を認識)や地球人の慣習(蛍狩り)からアイデアが生まれた。
つまり、地球人に注目されるように、森の中で光っている”ホタル”という虫の発光遺伝子を竹のDNAに挿入して、竹節の中の異星人が地球人の接近を感知した時に発光させて気を引くようにした。
さて、異星人達のプランは承認され、ゴーサインが出た。
異星人達は、地球人が足を踏み入れる里山の竹という植物を選択した。
異星人スタッフは、準備として竹の中の異星人の幼生が利用できるように栄養剤と抗菌剤を注入することにした。
竹の中では幼生が食べられるような団子様の物と、竹から出た後にも摂れるような丸薬様の物とした。
竹の中や、地球人に竹から取り出されてからも何らかの理由で栄養補給がされなかった場合に備えてである。
期待通りの地球人による保護が進まなかった緊急事態に備えてだった。
まあ念のためである。
(次回に続く)