SF異星人カグヤ姫物語

 

 

 

 

 

 

 
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左図:お墓 中図:バイ菌 右図:経口ワクチン(いずれも”いらすとや”)

 

  本SFショートではカグヤ姫異星人として描かれています。 

  この異星人は地球で言えば昆虫に似た生物です。 

  しかも、全く異なる2つの生物より成る社会を作っています。 

  1つは大部分を占める生物ですが、もう1つは少数派で多数派の生物に気付かれないように擬態の能力により多数派に紛れて生存しております。 

  カグヤ姫は少数派の生物に属します。

  

 

  カグヤ姫達異星人は、故郷の星が環境破壊などで住みづらくなり、一部は他の星での生存を期待して故郷の星を出発しました。  

  しかしながら、移住船での居住星の探索の旅の途中に仲間を感染症で失います。

  残ったカグヤ姫達の生残には、ライフサイクルの維持に不可欠なパートナーと成りうる生物を見つけないといけません。

  つまり、失った仲間がやってくれていた子孫の生育を、かわりに地球人の手を密かに借りようと企てます。

  でも、異星人達には感染症に対するトラウマがあります。

  上図にあるように、当時の土葬の地球人の死因を調べたり、異星人に病原性を示す地球の微生物の有無を調べたり、予防は接触を避けることですが、正体がわかって可能ならばワクチンで自分の免疫力をあげるなどです。

  異星人達は、移住可能かの判断材料のデータを現在収集中です。

 

 

  本SFは、題名の通りカグヤ姫を含む異星人達の立場でみた物語です。

  さて、かぐや姫が出てくる「竹取物語」ですが、あらためてWikipediaを見てみますと、平安時代に成立した物語で、作者不明で、正確な成立年も未詳とあります。

  「源氏物語」の文中にも記述があり、日本最古の物語だそうです。

  9世紀後半から10世紀前半頃に成立したとされる、かなによって書かれた最初期の物語の1つだそうです。

 

____________________________________

 

目次

第1章:異星人

第2章:地球(現在

第3章:カグヤ姫

第4章:求婚

第5章:領主三角(みかど)氏

第6章:カグヤ姫の憂鬱

第7章:帰還

第8章:エピローグ

___________________________________

(前回まで)

 

 異星人達の被寄生種は微生物感染で致命的な被害を被ったため、微生物感染は異星人にはトラウマであった。 

 そのため、異星人達は微生物のモニタリングをいろいろな場所で行った。 

 幸い、大気中・地表・水中などの微生物で異星人達に致命的な強い病原性を示すようなものはなさそうであった。

 

 

 ついで、地球人やその周辺生物の死因を調査するため、動植物に加え、人間の死体や密かに採取した死体からのサンプルを分析した。 

 当時の日本では医療を受けられる人間はごく一部の人達で、一般の人達では幅広い世代で亡くなっていた。 

 行き倒れも珍しいことではなかった。 

 亡くなれば、地域の墓地に土葬の形で葬られていた。 

 従って、異星人達にとっては死体が集まる墓地を観察していれば、調査が比較的に楽であった。 

 どんな世代の死者が多いか?男女差は?健康状態は?栄養状態は?異星人達の進んだ医学レベルで調査できた。 

 

 遺体や遺体のサンプル、そして遂には健常人からのサンプルが地球人に気づかれることなく収集され、分析され、データが蓄積されるに至った。 

 これは勿論病的状態を知るためには健常人のデータが当然必要となり、同時に地球人達には知られてはならないために行方不明となっても人々にそのことが知られないような一人あるいは少人数で生活している人達に目をつけて、人知れず捕獲していった。 

 

 感染が死因の場合では、病因と思われる微生物を分離し、性状を調べて異星人達の治療薬・予防薬の有効性を判定した。 

 つまり、地球の病原菌の感染を受けても異星人達は対応が可能な状態にしたかったのである。 

 彼らにとって乳母役の被寄生種を感染症で失ったことは大きなトラウマであったのだ。 

 異星人の病原体に類似している地球の微生物は要注意で、治療法・治療薬の用意の必要があったのだが、念には念を入れて、地球のありふれた微生物にも対策を取った。 

 地球の生物の皮膚表面や腸内には常在菌がいて、病原菌の繁殖を抑制したりしている一方で、生物の免疫・体力が低下した場合にはこうした常在菌が悪さをするのだ(日和見感染)。 

 異星人達も同様で、彼らにも体の表面や内面には”常在菌”や”腸内細菌”がいて健康に関わっていた。 

 彼らの常在菌は、放射線や薬剤で弱体化させた地球の病原菌と一緒に培養して生存競争させ、共存した場合には地球の病原菌を打ち負かせるような抗菌性を有するような変異を誘導した。 

 つまり、菌による菌のワクチン接種のようなものである。 

 この抗菌性の変異は、子孫の菌にも受け継がれた。 

 地球の微生物のようにプラスミド内に抵抗遺伝子を獲得した場合には、その子孫の微生物も抵抗性が遺伝していくように、異星人達の常在菌も地球の病原菌に対する抵抗性を遺伝することができた。 

 こうした抵抗性の常在菌は培養して、地球で生存しようとする異星人達に経口的に与えられた。 

 我々の時代の健康飲料のようなものである。

 

 

 

(次回に続く)  

 

SF異星人カグヤ姫物語

 

 

 

 

 

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左図:アリ 中図:イモムシ 右図:ハネカクシ (いずれも”いらすとや”)

 

  本SFショートではカグヤ姫異星人として描かれています。 

  この異星人は地球で言えば昆虫に似た生物です。 

  しかも、全く異なる2つの生物より成る社会を作っています。 

  1つは大部分を占める生物ですが、もう1つは少数派で多数派の生物に気付かれないように擬態の能力により多数派に紛れて生存しております。 

  カグヤ姫は少数派の生物に属します。

  

  前々回、地球の昆虫で植物への擬態でしられている昆虫を紹介しました。

前回は、他の昆虫への擬態が知られている昆虫を紹介しました(丸山宗利著「昆虫はすごい」光文社新書より)。

形態を似せて捕食者から逃れると考えられます。

  今回も、引き続き”居候”する昆虫を紹介します。

  

  上図の昆虫の仲間には、アリの集団への潜り込みで生存している昆虫が存在します。

  グンタイアリに紛れて狩りに参加し、餌を盗み食いするハネカクシや、クロヤマアリに餌をもらうハケゲアリノスハネカクシの幼虫、ヒメサスライアリに怪我を装い移動を助けてもらうハネカクシ、ゴマシジミというチョウの幼虫(イモムシ)はクシケアリの幼虫に紛れてアリの幼虫を餌にするそうです。

アリは化学物質でコミュニケーションするそうで、さらには形態を似せて誤魔化すことにより、こうした虫達はアリの敵と認識されにくいらしいです。

 

  本SFのカグヤ姫も”居候”する昆虫に似た生物との設定です。

形態をターゲットの生物に似せる、つまり擬態することが可能ですし、子孫をターゲットの生物の子孫に混ぜて育てさせる(居候)生活サイクルをも持っています。

さて、どのような物語となりますか?

 

 

  本SFは、題名の通りカグヤ姫を含む異星人達の立場でみた物語です。

  さて、かぐや姫が出てくる「竹取物語」ですが、あらためてWikipediaを見てみますと、平安時代に成立した物語で、作者不明で、正確な成立年も未詳とあります。

  「源氏物語」の文中にも記述があり、日本最古の物語だそうです。

  9世紀後半から10世紀前半頃に成立したとされる、かなによって書かれた最初期の物語の1つだそうです。

 

  本SFショートではカグヤ姫は異星人との設定です。 

  先祖である異星人達は、居住している星が人口増に伴う環境汚染や流星群との衝突による予想以上の被害により、生物として存続していくために他の星への移住を余儀なくされました。

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目次

第1章:異星人

第2章:地球(現在

第3章:カグヤ姫

第4章:求婚

第5章:領主三角(みかど)氏

第6章:カグヤ姫の憂鬱

第7章:帰還

第8章:エピローグ

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(前回まで)

 

 異星人達が移住先の第一候補としたのは地球であった。 

 当時の地球は、科学技術は異星人達には及ばないものの文化を持ち社会生活を営んでいた。 

 小型のロボット探査機は地球のいくつかの地域に送られた。 その一つは倭国(日本)であった。

 

 

・異星人による地球の生存適性についての探査

 

 異星人達の小型ロボット探査機は地球人の目の届かない地点に着陸し、搭載されているAI(人工知能は移住船の司令を受けて調査活動を早速始めた。 

 大気や地上の状態が異星人達の生存に可能であるか、様々な環境項目に対して回答を出していった。 

 幸い地球の大気中で異星人達は生存可能であると判った。

 

 各地のロボット探査機から移住船に送られた様々なデータは解析され、総合的に二次探査を実施するかどうか検討された。 

 二次探査では異星人チームが派遣されて異星人への生存適性が地球にあるかを調査するのである。 

 移住船のリーダー達による検討会議で、地球には探査チームが送られることとなった。

 

 地球の各地に12の探査チームが派遣された。 

 探査チームは責任者とそのサポート員で構成されていた。 

 日本にも1名の責任者に数名のサポート員が付随していた。 

 後に卵生状態の諜報員、地球人にカグヤ姫と呼ばれる諜報員地球人社会に送り込むことになる。 

 この日本基地では、諜報員カグヤ姫からのデータやサポート員の収集したデータを元にチームとしての対応を決定するのである。 

 日本以外の各地のチームも同様で、各地の対応は各地のチームに任されていた。   

 最終的に異星人の方針は、各地のチーム責任者に月基地の異星人本部のリーダー達が加わり、調査結果を元に討論されて決定されるのである。 

 

 異星人を乗せた探査機はやはり人目につかない場所に着陸した。 

 大気圏外で地表を観察した通り、地上での活発な活動を行っている生物の頂点には人間がいて、他の生物には見られない高度な社会生活を営んでいるようだった。 

 異星人達は寄生種であるため、共同生活できる被寄生種は安全な社会生活をしている生物である必要がある。 

 地球で安心して寄生生活を送れる生物は、やはり人間であった。 

 密かに人間の生活に侵入できれば、安全な生活を送っていけそうだった。

 

 異星人達の被寄生種は微生物感染で致命的な被害を被ったため、微生物感染は異星人にはトラウマであった。 

 そのため、異星人達は微生物のモニタリングをいろいろな場所で行った。 

 幸い、大気中・地表・水中などの微生物で異星人達に致命的な強い病原性を示すようなものはなさそうであった。 

 

 

(次回に続く)  

 

SF異星人カグヤ姫物語

 

 

 

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図:昆虫の擬態(左:アゲハ蝶、中:カタゾウムシ、右:スズメバチ)(いらすとやより)

    本SFショートではカグヤ姫異星人として描かれています。 

  この異星人は地球で言えば昆虫に似た生物です。 

  しかも、全く異なる2つの生物より成る社会を作っています。 

  1つは大部分を占める生物ですが、もう1つは少数派で多数派の生物に気付かれないように擬態の能力により多数派に紛れて生存しております。 

  カグヤ姫は少数派の生物に属します。

  

  前回、地球の昆虫で植物への擬態でしられている昆虫を紹介しました。

今回は、他の昆虫への擬態が知られている昆虫を紹介します(丸山宗利著「昆虫はすごい」光文社新書より)。

  上図の昆虫の仲間には、酷似する昆虫が存在します。

  有毒なオオゴマダラというマダラチョウには、無毒なオオゴマダラタイマイというアゲハチョウがいます。  

  捕食者には硬くて食べにくいカタゾウムシには、それほど硬くないカタゾウカミキリがいます。
  毒針を持つアシナガバチスズメバチには、姿の似たスカシバというがいます。

  いずれも、権力を持つ他人の後ろ盾で威張る人という意味の「虎の威を借る狐」戦略で捕食者から我が身を守る現象と見られます。

 

 

  本SFは、題名の通りカグヤ姫を含む異星人達の立場でみた物語です。

  さて、かぐや姫が出てくる「竹取物語」ですが、あらためてWikipediaを見てみますと、平安時代に成立した物語で、作者不明で、正確な成立年も未詳とあります。

  「源氏物語」の文中にも記述があり、日本最古の物語だそうです。

  9世紀後半から10世紀前半頃に成立したとされる、かなによって書かれた最初期の物語の1つだそうです。

 

  本SFショートではカグヤ姫は異星人との設定です。 

  先祖である異星人達は、居住している星が人口増に伴う環境汚染や流星群との衝突による予想以上の被害により、生物として存続していくために他の星への移住を余儀なくされました。

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目次

第1章:異星人

第2章:地球(現在

第3章:カグヤ姫

第4章:求婚

第5章:領主三角(みかど)氏

第6章:カグヤ姫の憂鬱

第7章:帰還

第8章:エピローグ

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(前回まで)

 

  しかし、被寄生種と寄生種は外見上見劣りなく作業をこなしてきており、共に困難にも対応してきた経験を共有しているので、寄生種主導に変わって異星人社会が機能不全に陥るようなことはまったくない。 

  ただ、寄生種は子育てが遺伝的に苦手という欠点があった。

  

 

第2章:地球

 

・地球への接近

 

    異星人達が生存可能な天体に接近した場合には、移住船のセンサーがそれを検知し異星人達のリーダー達が覚醒されるように冬眠装置がプログラムされていた。 

 移住船が太陽系に進入した時に、このプログラムにより異星人達が覚醒した。
    しかしながら、覚醒したのは予定のメンバー全員ではなかった。 

 覚醒したメンバーが調べてみると、覚醒しなかったメンバーの多くは死亡していた。 

 瀕死のメンバーは手当されたが残念ながら助けることはできなかった。 

 詳しく調べると、死亡したメンバーには微生物が体内で増殖していた。 

 

 前回のAIによる覚醒時には深刻な体調不良を訴える者はいなかった。
 移住船が出発した時に、既に微生物が感染しており、長い冬眠状態にあったとはいえ体の隅に付着した微生物がゆっくりだが次第に増えていき、やがては異星人達の体を蝕み死に至らせたものと診断された。 

 例えると、カビが浮遊している空間に防腐剤なしとありの餅を置いておいた結果に似ているかもしれない。 

 防腐剤入の餅ではカビが増えられないのと同様に、カビのような微生物に対する殺菌作用のある成分を体内で合成できる寄生種は平気であるが、被寄生種は体内で増えたカビに栄養を奪われ、またカビ毒のようなもので健康を奪われ、ついには死亡したようなものである。 

 前回の覚醒時は、その微生物の繁殖はおそらく健康被害を及ぼすほどではなかったものの、今回の覚醒までに繁殖が進み終には死者が出たようである。
 
    生き残ったメンバーは、寄生種の異星人達ばかりであることが分かった。 

 つまり、元来覚醒して移住方針を議論すべきメンバーであったが、被寄生種がメインで多数を占めていたものが大幅に欠けて、生存している寄生種メンバーのみで方針決定しなければならなくなった。
    寄生種メンバーしかいないので、生存戦略は奇譚のない方針が議論された。 

 移住船センサーが検出する適切な生存環境に加え、寄生種が共存、というよりは寄生できるようなある程度の高度な生物が生存活動を行っている天体を探すこととなった。

 

    移住船は太陽系に進入していたので、異星人たちは高度な生物の活動が見られるかどうかを宇宙空間から惑星一つ一つを観察していった。 

 移住先候補には、先住人に気付かれないように小型のロボット探査機を送り込んだ。 

 異星人達が移住先の第一候補としたのは地球であった。 

 当時の地球は、科学技術は異星人達には及ばないものの文化を持ち社会生活を営んでいた。 

 小型のロボット探査機は地球のいくつかの地域に送られた。 その一つは倭国(日本)であった。

 

 

 

(次回に続く)  

 

SF異星人カグヤ姫物語

 

 

 

 

 

 

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図:昆虫擬態(左:ハナカマキリ、中:コノハムシ、右:ナナフシ)(いらすとやより)

  花や葉っぱや小枝のような虫達。 彼らの住んでる環境に似せているのでしょうが、全く異なる生物(ここでは植物)にどのようにして似せられるのでしょうか?

 

  

  本SFは、題名の通りカグヤ姫を含む異星人達の立場でみた物語です。

 

  さて、かぐや姫が出てくる「竹取物語」ですが、あらためてWikipediaを見てみますと、平安時代に成立した物語で、作者不明で、正確な成立年も未詳とあります。

  「源氏物語」の文中にも記述があり、日本最古の物語だそうです。

  9世紀後半から10世紀前半頃に成立したとされる、かなによって書かれた最初期の物語の1つだそうです。

 

  本SFショートではカグヤ姫は異星人との設定です。 

  先祖である異星人達は、居住している星が人口増に伴う環境汚染や流星群との衝突による予想以上の被害により、生物として存続していくために他の星への移住を余儀なくされました。

____________________________________

 

目次

第1章:異星人(現在

第2章:地球

第3章:カグヤ姫

第4章:求婚

第5章:領主三角(みかど)氏

第6章:カグヤ姫の憂鬱

第7章:帰還

第8章:エピローグ

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(前回まで)

  生物達の科学技術は異星への移住が可能なレベルであったし、彼らは元来遺伝的に冬眠ができたのであった。 

  成長過程で冬眠期間を調整できて、不遇な環境を冬眠によりやり過ごすことができた。 

 


  こうして、他の星で発展した社会を再構築しようと希望する者を乗せた宇宙船は
出発した。

 

 

 

第1章:異星人

 

・移住船内の二つの異星人

     実は、この星の優位な生物は2種類の生物より構成されていた。 寄生種被寄生種である。 

  寄生種といっても被寄生種の体内に入るのではなく、寄生種の子孫(養子)を被寄生種に気づかれることなく被寄生種の子孫に混ぜることにより、被寄生種に子孫を育ててもらう(乳母)のである。 

  このために、寄生種(養子を出す種)は被寄生種(乳母の役をする種)に少なくとも外見上は見分けがつかないように擬態する能力に長けていた。 

  しかも、被寄生種が一つとは限らず、異なる種類の被寄生種に対しても、相手に応じた擬態ができるような優れた能力を持っていた。

  数から言えば、被寄生種が圧倒的に多く、この星の社会を作り上げていたといっても過言ではなかった。 

  上記に述べたような寄生種の能力により、寄生種は外見上被寄生種と見分けがつきにくく、ただ子孫の生育は被寄生種の子孫の集団保育にこっそり紛らわせて育ててもらっていた。
 
     流星の衝突で生存圏を脅かされた生物達に、さらに忍び寄った危機があった。  

  星の病原微生物による感染である。 

  星での社会では猛威を振るうことなかった病原菌が、環境変化で被寄生種への感染機会が増えた。 

  しかも、病原性が出てくるまで比較的時間を要するのである。 

  つまり、この病原菌の増える速度が遅いのである。 

  ゆっくり増えるので、感染しても気づきにくく、気がつけば治療困難となっているのである。 

  移住船に乗った生物達にも不幸にも既に感染者が含まれていたのである。 

 

   幸か不幸か、この病原菌に対して被寄生種は遺伝的に感染に弱く、寄生種は感染に強かったのである。    

  寄生種は、被寄生種に対応した擬態ができるためには外界の多様な環境に適応できるように、外界からの多様な刺激に対抗していかなければならなかった。 

  そのために、病原菌も含めた外部からの侵入に対しては、寄生種は体内で多様な分解酵素を作り出しており、あらゆる侵入してくるものを破壊できるのである。 

  一方、被寄生種は地球人に似たところがあって、優れた科学技術力で薬剤での消毒ワクチンにより病原体に対抗していた。 

  つまりは、遺伝的に被寄生種は寄生種より抗病性という点では劣っていた。 

 

  したがって、いかに宇宙船での冬眠生活といっても病原菌は冬眠することもなく、被寄生種間でスピードはかなり遅くなるものの着実に増えていく。 

  宇宙船でのいろいろな対応は主に多数派の被寄生種が多かったが、次第に病気の被寄生種に代わり元気な寄生種が主導する機会が増えていく。 

  しかし、被寄生種と寄生種は外見上見劣りなく作業をこなしてきており、共に困難にも対応してきた経験を共有しているので、寄生種主導に変わって異星人社会が機能不全に陥るようなことはまったくない。 

  ただ、寄生種は子育てが遺伝的に苦手という欠点があった。

 

 

(次回に続く)  

 

 

SF異星人カグヤ姫物語

 

 

 

 

 

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図。左図:環境破壊の星及び右図:流星(いらすとやより)

 

  本SFは、題名の通りカグヤ姫を含む異星人達の立場でみた物語です。

 

  さて、かぐや姫が出てくる「竹取物語」ですが、あらためてWikipediaを見てみますと、平安時代に成立した物語で、作者不明で、正確な成立年も未詳とあります。

  「源氏物語」の文中にも記述があり、日本最古の物語だそうです。

  9世紀後半から10世紀前半頃に成立したとされる、かなによって書かれた最初期の物語の1つだそうです。

 

  本SFショートではカグヤ姫は異星人との設定です。 

  先祖である異星人達は、居住している星が人口増に伴う環境汚染や流星群との衝突による予想以上の被害により、生物として存続していくために他の星への移住を余儀なくされました。

____________________________________

 

目次

第1章:異星人(現在

第2章:地球

第3章:カグヤ姫

第4章:求婚

第5章:領主三角(みかど)氏

第6章:カグヤ姫の憂鬱

第7章:帰還

第8章:エピローグ

___________________________________

(前回まで)

  宇宙船の生物は、一生の中で冬眠の期間が元々あるので長期間の冬眠にもさらに耐えられるのである。

      今回覚醒したのは、宇宙船が太陽系の惑星に接近しつつあるためだった。    

  宇宙船のセンサーは、木星、火星、月、地球が適した移住先の可能性を示していた。

 

 

第1章:異星人

 

・異星人達の移住船の出発

 

  宇宙船の出発はXXX年前にさかのぼる。 

  宇宙船の乗組員である生物は、ある星で生存していた。 

  彼らのような生物が生存できる環境であったが、大気は地球とはやや異なり、また宇宙からの放射線はやや強かったせいか地表に植物性の生物が繁茂していたが、動物性の生物は地下での生活を選択し、それなりに発展していた。 

  生物の起源はやはり微生物から始まっており、もちろんこの星でも存在し、こうした生物が星での生活輪廻を作っていた。 

  生物の頂点として発展したのは地球でいえば昆虫類様の生物であった。 

  しかしながら、地下に巨大な居住空間を建設しており、科学技術の発達レベルは現在の地球のレベルを凌ぐほどであった。

 

  この星では、人口爆発やそれにより引き起こされる環境破壊により他の星への移住をせざるを得ない状況が迫っていることは次第に知られつつあり、移住宇宙船が新たな居住星を求めて飛び立つ計画が作成されつつあった。 

  高度な天文学知識を持つ彼らは、既に居住候補の星をリストアップしていたが、居住可能かどうかは最終的に住んで確かめねばならなかった。

 

  快適な星での社会生活の終焉の始まりは、些細なことから突然引き金が引かれた。    

  小さな流星群がこの星に接近していることは星の科学者達も知ってはいたが、衝突しても流星のサイズが小さいことから問題はないものと予想していた。 

  しかしながら、大小の異なるサイズの複数の流星群であったために、その相互作用の影響でコースが変わり、予想以上の衝突が起こった。 

  個々の衝突は大したことはなかったものの、大小様々な衝突を立て続けに受けた。   

  局所での衝突のダメージはその付近の地殻で予想以上に大きく、環境の変化が波の伝わるように次第に地表で広がっていった。 

  その結果、生存環境の破壊が起こり、今までのような安定した生活を維持することが困難となった。 

 

  星のリーダー達は、生物の生残には少なくとも一部は他の星への移住が不可欠で、移住船の出発の前倒しは最優先事項との結論に達した。 

  希望に従って移住か残存かを選択できた。 

  生物達の科学技術は異星への移住が可能なレベルであったし、彼らは元来遺伝的に冬眠ができたのであった。 

  成長過程で冬眠期間を調整できて、不遇な環境を冬眠によりやり過ごすことができた。 

 

  こうして、他の星で発展した社会を再構築しようと希望する者を乗せた宇宙船は
出発した。

 

(次回に続く)  

 

 

SF異星人カグヤ姫物語

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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図:見知らぬ異星人の宇宙船(いらすとやより)

  本SFは、題名の通りカグヤ姫を含む異星人達の立場でみた物語です。

 

 

  さて、かぐや姫が出てくる「竹取物語」ですが、あらためてWikipediaを見てみますと、平安時代に成立した物語で、作者不明で、正確な成立年も未詳とあります。

  「源氏物語」の文中にも記述があり、日本最古の物語だそうです。

  9世紀後半から10世紀前半頃に成立したとされる、かなによって書かれた最初期の物語の1つだそうです。

____________________________________

 

目次

第1章:異星人(現在

第2章:地球

第3章:カグヤ姫

第4章:求婚

第5章:領主三角(みかど)氏

第6章:カグヤ姫の憂鬱

第7章:帰還

第8章:エピローグ

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第1章:異星人

 

・覚醒した異星人

   宇宙船がある星に接近した。

  リーダー格の乗組員が、宇宙船の覚醒装置により目覚めた。

  生命活動が見られる可能性がある星に接近すると、覚醒装置が働くようにプログラムされているのだった。

  宇宙船自体が、船の生命活動センサーが検知すると船の進路をその星に接近するようにセットされているのだ。 

  ある程度接近すると、船のクルーの一部が覚醒するようにプログラムされているのだ。

  船のAI(人工知能は星の生命体の存在の可能性を示す観測データが得られると、クルーを覚醒させる。 

  可能性が低いとAIが判定すれば、AIはクルーを起こすことなく冬眠が継続される。 

 

  宇宙船は移住船なのである。 

  元々住んでいた星から、別の天体への移住先を見つけようとしていたのだ。   

  乗組員達の生存に適した星を見つけ出すために、宇宙船のAIは観測を続けデータをとる。 

  総合評価が低いと、AIは宇宙船を通過させ、評価が高いとクルーに生存適性調査をするに値するかどうか評価させるために、リーダー格のクルー達を覚醒させて最終判断をさせるのだ。

 

  宇宙船が生命活動のありそうな星に接近していたので、クルーを覚醒させたのだ。 

  クルーは宇宙船のセンサーが取ったデータを検討して、ロボット探査体をこの星に着陸させてみることにした。 

  しかしながら、数日後に探査体が送ってきたデータからは乗組員達には残念ながら適した環境の星でないようであった。 

  クルーは次の可能性のある星が見つかり覚醒させられるまで、再度眠りについた。

 

   次にクルーが目覚めたのは、前回の覚醒からどのくらい時間が立ったのか? 何年、何10年、いや何100年、何1000年か。 

  宇宙船の生物は、一生の中で冬眠の期間が元々あるので長期間の冬眠にもさらに耐えられるのである。

      今回覚醒したのは、宇宙船が太陽系の惑星に接近しつつあるためだった。    

  宇宙船のセンサーは、木星、火星、月、地球が適した移住先の可能性を示していた。

 

(次回に続く)  

 

 

SF異星人カグヤ姫物語

 

 

 

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図:竹取物語(いらすとやより)

 

<御挨拶>

作者mふじとです。

  今回から「SF異星人カグヤ姫物語」の題名でSFショートを始めたいと思います。
  本SFショートは、以前に「異星人カグヤ物語」のタイトルで投稿した経緯がありますが、修正してブログでの公表としました。
  実は、本ブログで前回まで「火星居住基地の怪死」というタイトルでSFショートを連載してきて、この「SF異星人カグヤ姫物語」が2作目となります。
  このSFショートも投稿しましたが、「やはり」内容を練り直してブログ公開と致しました。 

  小説を書こうという考えもまるでなかったアマチュアですので当然の結果ですが、退職後の一つの道楽としてもう少し続けていけばどうなるかな?と思い、飽きるまで続けたいと思っております。

 

  さて、かぐや姫が出てくる「竹取物語」ですが、あらためてWikipediaを見てみますと、平安時代に成立した物語で、作者不明で、正確な成立年も未詳とあります。

  「源氏物語」の文中にも記述があり、日本最古の物語だそうです。

  9世紀後半から10世紀前半頃に成立したとされる、かなによって書かれた最初期の物語の1つだそうです。

 

  あらすじは、
  翁(お爺さん)が竹林に出かけて光り輝く竹の中に小さな女の子を見つけ、お婆さんと二人で自分たちの子供として大切に育てる。 

  女の子はどんどん大きくなり、三ヶ月ほどでこの世のものとは思えない程の美しい娘になった。 
  かぐや姫と名付けられた娘に世間の男達は皆夢中となったが、姿さえ見ることはできずに志の無い者はいなくなり、最後に残ったのは五人の公達(貴族)で諦めず夜昼となく通ってきた。 

  翁に結婚を勧められたかぐや姫は、「私の言う物を持ってきた方にお仕えします」と五人に伝えた。 

  しかし、どれも話にしか聞かない珍しい宝ばかりで、手に入れるのは困難であった。 

  それで、嘘がばれたり、偽物だったり、贋作であったり、探索中に失敗したりで結局かぐや姫の難題をこなした者は誰一人としていなかった。 
  この様子がにも伝わり、帝は面会を求めたが、かぐや姫は応じない。 

  不意に家を訪れ、かぐや姫を見た帝には、地上の人間とは思われない程のすばらしい女性であるとの気持ちが一層強くなった。 

  かぐや姫ばかりが心にかかって手紙で文通する。 
  こうした帝との文通が三年を経た頃より、かぐや姫は月を見ながら物思いにふけるようになる。 

  理由を翁が問うと、「私は地上ではなく月の世界の人なので、八月十五日に月に帰らねばならない」と。 

  帝は軍勢を送り阻止しようとするが、天人(かぐや姫を迎えに来た月の世界の人)にはまるで刃向かえず。 

  かぐや姫は帝への手紙を書き、天人の持ってきた薬の残りを添えて人に託した。 

  薬は、「地上の物を召し上がっていたので気分が悪いでしょう」と月の世界から持ってきた不死の薬であった。 

  そして、天の羽衣を着せられて物思いがなくなったかぐや姫を連れて、車で天に昇ってしまった。 
  帝は手紙を読みひどく悲しみ、「会うこともないのに、我が身に不死の薬はあっても何になろうか」と、天に近い駿河の国の日本一高い山で手紙と薬を焼くように命じた。

 

  以上の物語は、現在読んでも十分SFチィックであり、作者は上流階級の知識人と推測されるが、当時の発想においても既に現代での発想としても通用するような点が多くあり、驚嘆する。 

  自然を観察し発想を得る点は、中世人から現代人まであまり進歩はないのだろうか?

 

  こうして、現代人の私はもう少し努力してみようと、「異星人かぐや物語」のシチュエイションを変えて書き直して「SF異星人カグヤ姫物語」としました。   

  丸山宗則著「昆虫はすごい」(光文社新書)を発想の参考にさせていただきました。 

  作品の不足分は私の才能不足です。 

  前作の「火星居住基地の怪死」と同様に楽しんでいただければ幸いです。

 

なお、

目次

・異星人

・地球

・カグヤ姫

・求婚

・領主三角(みかど)氏

・カグヤ姫の憂鬱

・帰還

・エピローグ

の予定です。