本SFショートではカグヤ姫は異星人として描かれています。
この異星人は地球で言えば昆虫に似た生物です。
しかも、全く異なる2つの生物より成る社会を作っています。
1つは大部分を占める生物ですが、もう1つは少数派で多数派の生物に気付かれないように擬態の能力により多数派に紛れて生存しております。
カグヤ姫は少数派の生物に属します。
前回、地球の昆虫で植物への擬態でしられている昆虫を紹介しました。
今回は、他の昆虫への擬態が知られている昆虫を紹介します(丸山宗利著「昆虫はすごい」光文社新書より)。
上図の昆虫の仲間には、酷似する昆虫が存在します。
有毒なオオゴマダラというマダラチョウには、無毒なオオゴマダラタイマイというアゲハチョウがいます。
捕食者には硬くて食べにくいカタゾウムシには、それほど硬くないカタゾウカミキリがいます。
毒針を持つアシナガバチやスズメバチには、姿の似たスカシバというガがいます。
いずれも、権力を持つ他人の後ろ盾で威張る人という意味の「虎の威を借る狐」戦略で捕食者から我が身を守る現象と見られます。
本SFは、題名の通りカグヤ姫を含む異星人達の立場でみた物語です。
さて、かぐや姫が出てくる「竹取物語」ですが、あらためてWikipediaを見てみますと、平安時代に成立した物語で、作者不明で、正確な成立年も未詳とあります。
「源氏物語」の文中にも記述があり、日本最古の物語だそうです。
9世紀後半から10世紀前半頃に成立したとされる、かなによって書かれた最初期の物語の1つだそうです。
本SFショートではカグヤ姫は異星人との設定です。
先祖である異星人達は、居住している星が人口増に伴う環境汚染や流星群との衝突による予想以上の被害により、生物として存続していくために他の星への移住を余儀なくされました。
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目次
第1章:異星人
第2章:地球(現在)
第3章:カグヤ姫
第4章:求婚
第5章:領主三角(みかど)氏
第6章:カグヤ姫の憂鬱
第7章:帰還
第8章:エピローグ
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(前回まで)
しかし、被寄生種と寄生種は外見上見劣りなく作業をこなしてきており、共に困難にも対応してきた経験を共有しているので、寄生種主導に変わって異星人社会が機能不全に陥るようなことはまったくない。
ただ、寄生種は子育てが遺伝的に苦手という欠点があった。
第2章:地球
・地球への接近
異星人達が生存可能な天体に接近した場合には、移住船のセンサーがそれを検知し異星人達のリーダー達が覚醒されるように冬眠装置がプログラムされていた。
移住船が太陽系に進入した時に、このプログラムにより異星人達が覚醒した。
しかしながら、覚醒したのは予定のメンバー全員ではなかった。
覚醒したメンバーが調べてみると、覚醒しなかったメンバーの多くは死亡していた。
瀕死のメンバーは手当されたが残念ながら助けることはできなかった。
詳しく調べると、死亡したメンバーには微生物が体内で増殖していた。
前回のAIによる覚醒時には深刻な体調不良を訴える者はいなかった。
移住船が出発した時に、既に微生物が感染しており、長い冬眠状態にあったとはいえ体の隅に付着した微生物がゆっくりだが次第に増えていき、やがては異星人達の体を蝕み死に至らせたものと診断された。
例えると、カビが浮遊している空間に防腐剤なしとありの餅を置いておいた結果に似ているかもしれない。
防腐剤入の餅ではカビが増えられないのと同様に、カビのような微生物に対する殺菌作用のある成分を体内で合成できる寄生種は平気であるが、被寄生種は体内で増えたカビに栄養を奪われ、またカビ毒のようなもので健康を奪われ、ついには死亡したようなものである。
前回の覚醒時は、その微生物の繁殖はおそらく健康被害を及ぼすほどではなかったものの、今回の覚醒までに繁殖が進み終には死者が出たようである。
生き残ったメンバーは、寄生種の異星人達ばかりであることが分かった。
つまり、元来覚醒して移住方針を議論すべきメンバーであったが、被寄生種がメインで多数を占めていたものが大幅に欠けて、生存している寄生種メンバーのみで方針決定しなければならなくなった。
寄生種メンバーしかいないので、生存戦略は奇譚のない方針が議論された。
移住船センサーが検出する適切な生存環境に加え、寄生種が共存、というよりは寄生できるようなある程度の高度な生物が生存活動を行っている天体を探すこととなった。
移住船は太陽系に進入していたので、異星人たちは高度な生物の活動が見られるかどうかを宇宙空間から惑星一つ一つを観察していった。
移住先候補には、先住人に気付かれないように小型のロボット探査機を送り込んだ。
異星人達が移住先の第一候補としたのは地球であった。
当時の地球は、科学技術は異星人達には及ばないものの文化を持ち社会生活を営んでいた。
小型のロボット探査機は地球のいくつかの地域に送られた。 その一つは倭国(日本)であった。
(次回に続く)