本SFショートではカグヤ姫は異星人として描かれています。
この異星人は地球で言えば昆虫に似た生物です。
しかも、全く異なる2つの生物より成る社会を作っています。
1つは大部分を占める生物ですが、もう1つは少数派で多数派の生物に気付かれないように擬態の能力により多数派に紛れて生存しております。
カグヤ姫は少数派の生物に属します。
カグヤ姫達異星人は、故郷の星が環境破壊などで住みづらくなり、一部は他の星での生存を期待して故郷の星を出発しました。
しかしながら、移住船での居住星の探索の旅の途中に仲間を感染症で失います。
残ったカグヤ姫達の生残には、ライフサイクルの維持に不可欠なパートナーと成りうる生物を見つけないといけません。
つまり、失った仲間がやってくれていた子孫の生育を、かわりに地球人の手を密かに借りようと企てます。
でも、異星人達には感染症に対するトラウマがあります。
上図にあるように、当時の土葬の地球人の死因を調べたり、異星人に病原性を示す地球の微生物の有無を調べたり、予防は接触を避けることですが、正体がわかって可能ならばワクチンで自分の免疫力をあげるなどです。
異星人達は、移住可能かの判断材料のデータを現在収集中です。
本SFは、題名の通りカグヤ姫を含む異星人達の立場でみた物語です。
さて、かぐや姫が出てくる「竹取物語」ですが、あらためてWikipediaを見てみますと、平安時代に成立した物語で、作者不明で、正確な成立年も未詳とあります。
「源氏物語」の文中にも記述があり、日本最古の物語だそうです。
9世紀後半から10世紀前半頃に成立したとされる、かなによって書かれた最初期の物語の1つだそうです。
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目次
第1章:異星人
第2章:地球(現在)
第3章:カグヤ姫
第4章:求婚
第5章:領主三角(みかど)氏
第6章:カグヤ姫の憂鬱
第7章:帰還
第8章:エピローグ
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(前回まで)
異星人達の被寄生種は微生物感染で致命的な被害を被ったため、微生物感染は異星人にはトラウマであった。
そのため、異星人達は微生物のモニタリングをいろいろな場所で行った。
幸い、大気中・地表・水中などの微生物で異星人達に致命的な強い病原性を示すようなものはなさそうであった。
ついで、地球人やその周辺生物の死因を調査するため、動植物に加え、人間の死体や密かに採取した死体からのサンプルを分析した。
当時の日本では医療を受けられる人間はごく一部の人達で、一般の人達では幅広い世代で亡くなっていた。
行き倒れも珍しいことではなかった。
亡くなれば、地域の墓地に土葬の形で葬られていた。
従って、異星人達にとっては死体が集まる墓地を観察していれば、調査が比較的に楽であった。
どんな世代の死者が多いか?男女差は?健康状態は?栄養状態は?異星人達の進んだ医学レベルで調査できた。
遺体や遺体のサンプル、そして遂には健常人からのサンプルが地球人に気づかれることなく収集され、分析され、データが蓄積されるに至った。
これは勿論病的状態を知るためには健常人のデータが当然必要となり、同時に地球人達には知られてはならないために行方不明となっても人々にそのことが知られないような一人あるいは少人数で生活している人達に目をつけて、人知れず捕獲していった。
感染が死因の場合では、病因と思われる微生物を分離し、性状を調べて異星人達の治療薬・予防薬の有効性を判定した。
つまり、地球の病原菌の感染を受けても異星人達は対応が可能な状態にしたかったのである。
彼らにとって乳母役の被寄生種を感染症で失ったことは大きなトラウマであったのだ。
異星人の病原体に類似している地球の微生物は要注意で、治療法・治療薬の用意の必要があったのだが、念には念を入れて、地球のありふれた微生物にも対策を取った。
地球の生物の皮膚表面や腸内には常在菌がいて、病原菌の繁殖を抑制したりしている一方で、生物の免疫・体力が低下した場合にはこうした常在菌が悪さをするのだ(日和見感染)。
異星人達も同様で、彼らにも体の表面や内面には”常在菌”や”腸内細菌”がいて健康に関わっていた。
彼らの常在菌は、放射線や薬剤で弱体化させた地球の病原菌と一緒に培養して生存競争させ、共存した場合には地球の病原菌を打ち負かせるような抗菌性を有するような変異を誘導した。
つまり、菌による菌のワクチン接種のようなものである。
この抗菌性の変異は、子孫の菌にも受け継がれた。
地球の微生物のようにプラスミド内に抵抗遺伝子を獲得した場合には、その子孫の微生物も抵抗性が遺伝していくように、異星人達の常在菌も地球の病原菌に対する抵抗性を遺伝することができた。
こうした抵抗性の常在菌は培養して、地球で生存しようとする異星人達に経口的に与えられた。
我々の時代の健康飲料のようなものである。
(次回に続く)