SF異星人カグヤ姫物語

 

 

 

左図:授乳 中図:餌の保存 右図:ホクロ (いずれも”いらすとや”)

 

 異星人の思惑通りカグヤ姫は老夫婦により引き取られ、うまく地球人社会の入り口にたどり着きました。 

 異星人カグヤ姫は地球人そっくりに擬態できる能力があり外見上見分けが付きません。 

 しかし、地球人との生活が始まる当初は、接触する地球人に異星人と知られることなく、なるべく地球人として目立つことなく生活に溶け込もうとの方針に決まりまりました。 

 カグヤ姫は地球人の赤子達に混じり母乳で育てられます。 

 しかしながら異星人の食事を地球人食に一変する訳には行きませんので、異星人の栄養食を体内に蓄えていて徐々に地球食に混ぜながら慣らしていきました。 

 異星人は、解剖学的に地球の動物の頬袋のような食べ物を保存できる構造を持っているのです。

 カグヤ姫には、よくみるとホクロがありますが、これは実は極小通信機なのです。

 以上のような地球人社会への対応は、異星人サポーターとの連絡の結果による対応なのです。

 

 

  本SFショートではカグヤ姫異星人として描かれています。 

  この異星人は、地球で言えば昆虫に似た生物です。 

  しかも、彼らの住む星では全く異なる2つの生物より成る社会を作っています。 

  1つは大部分を占める生物(被寄生種)ですが、もう1つは少数派で多数派の生物に気付かれないように擬態の能力により多数派に紛れて生存(寄生)しております。 

  カグヤ姫は少数派の(寄生種)生物に属します。

 

 

  カグヤ姫達異星人は、故郷の星が環境破壊などで住みづらくなり、一部は他の星での生存を期待して故郷の星を出発しました。  

  しかしながら、移住船での居住星の探索の旅の途中に仲間を感染症で失います。

  残ったカグヤ姫達の生残には、ライフサイクルの維持に不可欠なパートナーと成りうる(被寄生種)生物を見つけないといけません。

  つまり、失った仲間がやってくれていた子孫の生育を、かわりに地球人の手を密かに借りようと企てます。 

  勿論、異星人の擬態能力で外見は地球人です。

 

  育ての親候補として人の良さそうな老夫婦が選ばれた訳ですが、果たして異星人達が目論むようにカグヤ姫は育っていけるのでしょうか?

      

  異星人達は、世界中に出されたカグヤ姫のような里子達が、幸福な生活を送れるように願いながら観察を継続していきます。 

  何故なら場合により、異星人達は地球を離れて新たな移住星候補を探索する旅に出なければなりません。

 

  本SFは、題名の通りカグヤ姫を含む異星人達の立場でみた物語です。

  さて、かぐや姫が出てくる「竹取物語」ですが、あらためてWikipediaを見てみますと、平安時代に成立した物語で、作者不明で、正確な成立年も未詳とあります。

  「源氏物語」の文中にも記述があり、日本最古の物語だそうです。

  9世紀後半から10世紀前半頃に成立したとされる、かなによって書かれた最初期の物語の1つだそうです。

 

____________________________________

 

目次

第1章:異星人

第2章:地球

第3章:カグヤ姫(現在はこちら!

第4章:求婚

第5章:領主三角(みかど)氏

第6章:カグヤ姫の憂鬱

第7章:帰還

第8章:エピローグ

___________________________________

(前回まで)

 

子供達が少し大きくなると老夫婦の邸宅内にある学問所で初等教育を受け始める。   

  さらに大きくなった子弟は希望に従って外部での教育を受けられる。 

  医薬方面に進もうとする子弟は、老夫婦の弟子達が講師となって教育していく。  

  こうしてカグヤ姫は、地球人の赤子から一生を終えるまでの集団社会生活の中で運良く育てられるようになったのだ。

 

 

 

      カグヤ姫は、都の老夫婦の邸宅に連れてこられてから地球人の赤子と幼少の子供とその親に囲まれた環境に置かれたと自覚していた。 

  接触する親は女性が多く、接する機会の少ない男性とのペアで子孫を持つようだ。   

  地球人の赤子は異星人のカグヤ姫程発達は早くないようだ。 

  もっとも、地球人の食事には徐々に慣れていくため、異星人特有の身体構造の一つの保存袋(哺乳類の頬袋みたいなもの)部内に蓄えた特別栄養補助食を母乳と混ざった状態で摂っていた。 

  いずれは地球食で生きなければならないが、まずは地球食一変による体調不良を避けたのである。 

  また、地球人の赤子は、音声で親の注意を引き、食事や排泄物処理の依頼をするが、意思伝達方法は単純に”泣く”という方法だけのようだ。 

  親の方が要求を察知して進んで世話をするまで、赤子の方は待つようだ。

  寄生段階をライフサイクル中に持つ異星人には、世話好きな地球人の性格は共同生活する上でありがたいものだ。

 

  一方、外見では地球人と見分けがつかない様にしている異星人のカグヤ姫だが、既に外界の認知能力や外界への伝達能力は複数の方法を発達させていた。 

  つまり、見た目はすやすや寝ている普通の赤子に変わりないのだが、地球人の赤子しか部屋にいなくなると極小の無線機を通して異星人スタッフと交信し近況報告したり、極小記録機の調節をしたりしていた。 

  無線機や記録機はホクロにしか見えなかった。 

  異星人スタッフは、今まで外部から地球人を観察してきた多数の記録を通してアドバイスを与えることができる。 

  しかし、実際に地球人との対応の記録は、今後地球人との共同生活を送るようになった場合には果てしなく重要である。 

  特に初期の段階では、地球人に異星人の存在を知られることなく地球人社会に溶け込む必要がある。 

  なにせ、異星人達は寄生性生物であり、被寄生生物の地球人の存在が不可欠である。 

  地球人が共同生活不可の場合は次期移住星候補の探索に出なくてはならない。 

  異星人達の記録機は、現代のビデオ様機器をイメージすると想像し易いが、原理的に別の科学理論により作られた別物である。 

  例えば異星人の知覚能力に対応しており、色や音や匂い以外に地球人に無い感覚なども再生伝達が可能である。 

  異星人達の科学技術は実際比べようもなく高度であった。

 

      異星人の知覚能力カグヤ姫の異星人スタッフにした初期の報告は、

「放置された赤子をも大切に扱い、共同して無償に仲間の赤子を育てようとする地球人の性質は我々異星人の寄生生活に最適だ」

異星人の存在を認識した場合の地球人の我々に対する態度は今予測不能。 もっと観察期間が必要」

「我々異星人の安全安定な生活を維持するには、我々の存在やその寄生性生活は極秘が良」であった。

 

 

 

(次回に続く)

SF異星人カグヤ姫物語

 

 

 

 

 

左図:赤子達 中図:授乳 右図:老夫婦(いずれも”いらすとや”)

 

 カグヤ姫養父母を探していた異星人達により、何年も前に周到に用意された計画があり、異星人の思惑通り老夫婦により異星人の赤ん坊は引き取られました。 

 異星人カグヤ姫は地球人そっくりに擬態できる能力があり外見上見分けが付きません。 

 しかし、地球人との生活が始まる当初は、接触する地球人に異星人と知られることなく、なるべく地球人として目立つことなく生活に溶け込もうとの方針に決まりまりました。 

 老夫婦の邸宅には、弟子や使用人の家族も一緒に生活しており、カグヤ姫のような赤子から幼少の子供が多数いて地球人としての振る舞いを学んでいかねばなりません。

 まずは食べ物ですが、異星人の必要栄養は異なるために内緒で地球食と並行して摂ります。 

 地球人の乳母からの母乳に、さらに濃縮栄養剤を摂ります。  

 カグヤ姫の外観は地球人の赤子と変わりませんが、生物機能の発達ははるかに早熟です。

 

  本SFショートではカグヤ姫異星人として描かれています。 

  この異星人は、地球で言えば昆虫に似た生物です。 

  しかも、彼らの住む星では全く異なる2つの生物より成る社会を作っています。 

  1つは大部分を占める生物(被寄生種)ですが、もう1つは少数派で多数派の生物に気付かれないように擬態の能力により多数派に紛れて生存(寄生)しております。 

  カグヤ姫は少数派の(寄生種)生物に属します。

 

 

  カグヤ姫達異星人は、故郷の星が環境破壊などで住みづらくなり、一部は他の星での生存を期待して故郷の星を出発しました。  

  しかしながら、移住船での居住星の探索の旅の途中に仲間を感染症で失います。

  残ったカグヤ姫達の生残には、ライフサイクルの維持に不可欠なパートナーと成りうる(被寄生種)生物を見つけないといけません。

  つまり、失った仲間がやってくれていた子孫の生育を、かわりに地球人の手を密かに借りようと企てます。 

  勿論、異星人の擬態能力で外見は地球人です。

 

  育ての親候補として人の良さそうな老夫婦が選ばれた訳ですが、果たして異星人達が目論むようにカグヤ姫は育っていけるのでしょうか?

      

  異星人達は、世界中に出されたカグヤ姫のような里子達が、幸福な生活を送れるように願いながら観察を継続していきます。 

  何故なら場合により、異星人達は地球を離れて新たな移住星候補を探索する旅に出なければなりません。

 

  本SFは、題名の通りカグヤ姫を含む異星人達の立場でみた物語です。

  さて、かぐや姫が出てくる「竹取物語」ですが、あらためてWikipediaを見てみますと、平安時代に成立した物語で、作者不明で、正確な成立年も未詳とあります。

  「源氏物語」の文中にも記述があり、日本最古の物語だそうです。

  9世紀後半から10世紀前半頃に成立したとされる、かなによって書かれた最初期の物語の1つだそうです。

 

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目次

第1章:異星人

第2章:地球

第3章:カグヤ姫(現在はこちら!

第4章:求婚

第5章:領主三角(みかど)氏

第6章:カグヤ姫の憂鬱

第7章:帰還

第8章:エピローグ

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(前回まで)

 

  しかし、赤子ながら異星人が途中経過を異星人スタッフにホクロを通して報告した際に、偶然スダレ越しに「カグヤ、カグヤ」と産声を耳にしたお爺さんは娘をカグヤ姫と名付けることにした。 

  耳にした「カグヤ」とは、実は娘が自分のホクロ状の埋め込み型通信機を通して、通信相手の異星人サポート員への呼び掛けの声だったのである。

 

 

カグヤ姫の成長

  お爺さんは現在第一線を退いているが、領主の健康上の問題に対してカウンセリングやアドバイスをできる立場にあった。 

  とはいえ上流社会の付き合いだけでなく、庶民レベルへと軸足を移して養生所で患者の問診や健康相談などに当たって直接庶民の声を聞いていた。 

  こうして得た庶民の要望などを上の行政部に伝えるようにして、すべからく人々の健康の維持に寄与していた。 

  したがって、老夫婦の屋敷は養生所に比較的近いところにあり、養生所や患者宅への往診には便利なところであった。 

  屋敷は比較的大きく、数名の弟子の家族や仕事上及び家事上の雑役を行う数名の使用人家族達が同じ敷地内に居住していた。

 

  赤子のカグヤ姫は屋敷の保育部屋に連れて行かれた。 

  老夫婦の弟子使用人乳飲み子や幼少の子供達が、親の勤務中にこの部屋を利用していたので、母乳の出る母親や乳母からカグヤ姫に母乳のお裾分けを頼んでいた。    

  カグヤ姫の乳飲み量は最初多くなかったが、乳母はカグヤ姫が元気そうで、むしろ他の赤子より肌もふっくらと色艶もいいので、「乳を飲むのは初対面のヒトからなので少ない様だけれど、きっと人見知りからでしょう。 慣れるまででしょう。 それより驚くほど元気なのでまったく心配ないですよ」と、気懸かりそうな老夫婦に伝えた。   

 

  カグヤ姫のような乳飲み子は何人かいて、年少の者も何人かいて同じ年頃なので一緒に遊んだり、乳飲み子にちょっかいをだしたりしていた。 

  母親達は世間話や幼少の子供達にたまに注意しながら母乳をあたえたりオムツ替えをしたり、そして時間が空くと子供達を数人の母親達にまかせて交代で自宅に帰り用事を済ませていた。 

  子供達が少し大きくなると老夫婦の邸宅内にある学問所で初等教育を受け始める。   

  さらに大きくなった子弟は希望に従って外部での教育を受けられる。 

  医薬方面に進もうとする子弟は、老夫婦の弟子達が講師となって教育していく。  

  こうしてカグヤ姫は、地球人の赤子から一生を終えるまでの集団社会生活の中で運良く育てられるようになったのだ。

 

 

(次回に続く)

SF異星人カグヤ姫物語

 

 

SF作家の地球旅行記

SF作家の地球旅行記

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左図:愛情 中図:栄養剤 右図:ホクロ (いずれも”いらすとや”)

 

 カグヤ姫養父母を探していた異星人達により、何年も前に周到に用意された計画があり、異星人の思惑通り老夫婦により異星人の赤ん坊は引き取られました。 

 異星人カグヤ姫は地球人そっくりに擬態できる能力がありましたが、さらに元来は寄生種であるため被寄生種の親に愛情をもって育ててもらわなければなりません。 

 被寄生種に愛情を生み出させるような何か因子を異星人は持っている?

ちなみに、哺乳類では愛情ホルモンとしてプロラクチンが知られています。

 

 事前調査で地球人の食材は異星人に毒性は無さそうでしたが、はたして実際は?

 念のためカグヤ姫は濃縮栄養剤を持参し、人知れず併用していきます。

 

 地球人の赤子そっくりですが異星人の赤子は発達が早く、自分の体内に埋め込まれた小型通信機、実はホクロにみえるのですが、これを通して内密に異星人スタッフと連絡を取ります。

 

 

  本SFショートではカグヤ姫異星人として描かれています。 

  この異星人は、地球で言えば昆虫に似た生物です。 

  しかも、彼らの住む星では全く異なる2つの生物より成る社会を作っています。 

  1つは大部分を占める生物(被寄生種)ですが、もう1つは少数派で多数派の生物に気付かれないように擬態の能力により多数派に紛れて生存(寄生)しております。 

  カグヤ姫は少数派の(寄生種)生物に属します。

 

 

  カグヤ姫達異星人は、故郷の星が環境破壊などで住みづらくなり、一部は他の星での生存を期待して故郷の星を出発しました。  

  しかしながら、移住船での居住星の探索の旅の途中に仲間を感染症で失います。

  残ったカグヤ姫達の生残には、ライフサイクルの維持に不可欠なパートナーと成りうる(被寄生種)生物を見つけないといけません。

  つまり、失った仲間がやってくれていた子孫の生育を、かわりに地球人の手を密かに借りようと企てます。 

  勿論、異星人の擬態能力で外見は地球人です。

 

  育ての親候補として人の良さそうな老夫婦が選ばれた訳ですが、果たして異星人達が目論むようにカグヤ姫は育っていけるのでしょうか?

      

  異星人達は、世界中に出されたカグヤ姫のような里子達が、幸福な生活を送れるように願いながら観察を継続していきます。 

  何故なら場合により、異星人達は地球を離れて新たな移住星候補を探索する旅に出なければなりません。

 

  本SFは、題名の通りカグヤ姫を含む異星人達の立場でみた物語です。

  さて、かぐや姫が出てくる「竹取物語」ですが、あらためてWikipediaを見てみますと、平安時代に成立した物語で、作者不明で、正確な成立年も未詳とあります。

  「源氏物語」の文中にも記述があり、日本最古の物語だそうです。

  9世紀後半から10世紀前半頃に成立したとされる、かなによって書かれた最初期の物語の1つだそうです。

 

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目次

第1章:異星人

第2章:地球

第3章:カグヤ姫(現在はこちら!

第4章:求婚

第5章:領主三角(みかど)氏

第6章:カグヤ姫の憂鬱

第7章:帰還

第8章:エピローグ

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(前回まで)

 

村の住人は少し離れた、人間がより多数で住んでいる”町“へ物々交換するためにたまに行くようである。 

町や村への移動は徒歩や、家畜と言う他の生物を利用して行き来している。 

人間同士の争いでは刀と言う武器で相手を殺してしまう残忍さがある。 

ただ、すべての人間が刀を使用するわけではなく、本来多くの人間は好戦的ではないようである」というような事。

 

 

  老夫婦一行はの通りに入り、やがて見慣れた御近所の家屋が目に入り、ついには老夫婦の屋敷の門をくぐった。 

  荷車の荷をほどくのは使用人と弟子に任せ、老夫婦は留守を任せていた使用人達に赤ん坊を連れてきた経緯を簡単に話し、家の方の受け入れ準備を命じた。 

  使用人達は予想外の事で少なからず驚いたが、老夫婦の幼いを受け入れたことがあり、その時の対処を思い出しつつ準備した。 

 

  家に連れ帰られた赤子を触ったお婆さんにも、赤子から皮膚を通して愛情ホルモンという因子が入っていった。 

  異星人の分泌するホルモンだが、地球人に対しても同じ作用を示した。 

  他生物への寄生がライフサイクルに入っている異星人には、生存のためには進化上不可欠だったのかもしれない。

  「お爺さん、この子かわいいから育てましょうね。 

  大きくなったらどんな娘になるか楽しみだわ。 

  見てみたいから私達も元気でいなくっちゃあ」

 

  こうして異星人の赤子は地球人に受け入れられたが、外見上は地球人の赤子によく似ていた。 

  愛情ホルモン以外、さらに異星人は周囲の義兄弟姉妹に見かけ上外観を似せることができる擬態という能力も持っていた。 

  こうした能力を駆使して、赤ん坊はお爺さんとお婆さんに受け入れさせたのである。

 

  赤ん坊はあまり食物をとらないにもかかわらず元気であった。 

  竹の中に、万一地球上の食物が有害となった場合に備えて、竹の中に濃縮栄養剤を同封されていたのであるが、異星人の体内には構造上食物を保存できる場所があった。 

  例えれば、地球の動物のげっ歯類、ハムスターとかリスのような頬袋みたいなものである。 

  勿論、異星人の場合の貯蔵場所は、外見上容易にはわからない。 

  異星人スタッフにより、地球人の一般の食事材料に関してはその毒性については特に事前試験調査されていたのであったが。 

  地球の食材を分析すると化学構造上は栄養成分として可であったが、調査員第一号の異星人の赤子としての重要な成長期への悪影響があれば最小にしたいということで、異星人の栄養剤を併用することにした。 

  お爺さんとお婆さんは勿論気付くはずもなかった。

 

  さらに、異星人は極小さな通信機を卵に注入した後に、卵を竹の中に移植したのだった。 

  地球人に引き取られた中で、異星人の赤子が異星人スタッフに直に連絡を取りたい場合に備えてだった。 

  まずは、地球の離乳食上でのトラブルの可能性があったが、幸い取り越し苦労で済んだ。 

  地球人の赤子のイメージと異なり、孵化後すぐ異種生物が周囲にいてその中を生き抜かねばならない異星人の赤子は、かなり発達した状態で生まれてくる。 

  生まれつき、既に簡単なコミュニケーションはとれるのだ。

  お爺さんとお婆さんには、この通信機は腕にある小さなホクロとしか見えなかった。 

  いや、老眼の老夫婦はホクロにも気づかなかった。 

  しかし、赤子ながら異星人が途中経過を異星人スタッフにホクロを通して報告した際に、偶然スダレ越しに「カグヤ、カグヤ」と産声を耳にしたお爺さんは娘をカグヤ姫と名付けることにした。 

  耳にした「カグヤ」とは、実は娘が自分のホクロ状の埋め込み型通信機を通して、通信相手の異星人サポート員への呼び掛けの声だったのである。 

 

 

(次回に続く)

SF異星人カグヤ姫物語

 

 

左図:農民 中図:特産品 右図:足軽(いずれも”いらすとや”)

 

  異星人(カグヤ姫)は、職業上定例の薬草採取に来ていた老夫婦一行に偶然の中に見出されました。
  しかし、この偶然の出会いは、カグヤ姫の養父母を探していた異星人達により何年も前に周到に計画されたものだったのです。

 

  異星人の思惑通り老夫婦により異星人の赤ん坊は引き取られました。 

予定の薬草に、燃料の薪に、全く想定外の赤子まで加わった一行はいよいよ都への帰途に着きます。

  里山から、河川の側を通り、田園地帯を抜けて都まで景色は変わっていきます。

今回は我が家へとやや急ぎ足ですが、いつもの採取旅行の帰りのように各地の特産品は手に入れますー野鳥、獣肉、エビ・カニ・魚等の水産物穀物野菜。

  裕福な老夫婦は都でも望むものは手に入りますが、弟子や使用人は家族を含むと大人数ですので、やはり安くて鮮度の良い物をこの機会に持って帰ります。

  栄養についても知識がある老夫婦は、気前良く一門のために、特に育ち盛りの者のためにも手に入れていきます。

  都に近づくと、治安のための足軽の姿も認められるようになり、一行も我が家に戻ってきたと実感するようになります。

 

  本SFショートではカグヤ姫異星人として描かれています。 

  この異星人は、地球で言えば昆虫に似た生物です。 

  しかも、彼らの住む星では全く異なる2つの生物より成る社会を作っています。 

  1つは大部分を占める生物(被寄生種)ですが、もう1つは少数派で多数派の生物に気付かれないように擬態の能力により多数派に紛れて生存(寄生)しております。 

  カグヤ姫は少数派の(寄生種)生物に属します。

 

 

  カグヤ姫達異星人は、故郷の星が環境破壊などで住みづらくなり、一部は他の星での生存を期待して故郷の星を出発しました。  

  しかしながら、移住船での居住星の探索の旅の途中に仲間を感染症で失います。

  残ったカグヤ姫達の生残には、ライフサイクルの維持に不可欠なパートナーと成りうる(被寄生種)生物を見つけないといけません。

  つまり、失った仲間がやってくれていた子孫の生育を、かわりに地球人の手を密かに借りようと企てます。 

  勿論、異星人の擬態能力で外見は地球人です。

 

  育ての親候補として人の良さそうな老夫婦が選ばれた訳ですが、果たして異星人達が目論むようにカグヤ姫は育っていけるのでしょうか?

      

  異星人達は、世界中に出されたカグヤ姫のような里子達が、幸福な生活を送れるように願いながら観察を継続していきます。 

  何故なら場合により、異星人達は地球を離れて新たな移住星候補を探索する旅に出なければなりません。

 

  本SFは、題名の通りカグヤ姫を含む異星人達の立場でみた物語です。

  さて、かぐや姫が出てくる「竹取物語」ですが、あらためてWikipediaを見てみますと、平安時代に成立した物語で、作者不明で、正確な成立年も未詳とあります。

  「源氏物語」の文中にも記述があり、日本最古の物語だそうです。

  9世紀後半から10世紀前半頃に成立したとされる、かなによって書かれた最初期の物語の1つだそうです。

 

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目次

第1章:異星人

第2章:地球

第3章:カグヤ姫(現在はこちら!

第4章:求婚

第5章:領主三角(みかど)氏

第6章:カグヤ姫の憂鬱

第7章:帰還

第8章:エピローグ

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(前回まで)

 

  異星人達は、カグヤ姫が今後一緒に暮らすようになる老夫婦の使用人や弟子達の子供達の外見、行動、成長過程等の情報を大まかには知らせていた。 

  老夫婦の家で一緒に暮らすようになった後からは、地球人の子供のDNAを含む分泌物や髪の毛、爪等は、カグヤ姫により密かに採取されより良い擬態のために利用されることになる。 

  こうして、カグヤ姫が老夫婦に出会う前に擬態の段階は着々と進められていたのだった。

 

 

 

   老夫婦は、予定を早めて帰京の準備を指示した。「赤ん坊のために少し早めに家に帰ろうや」

 

      使用人や弟子達は、牛に引かせる荷車に今回採取した薬草及び前回までに乾燥保存していた薬草を乗せた。

  家の在庫の薬草に補充するのだ。 

  また、台所や風呂、暖房などに使う薪も次回の採取旅行までの予定の補充分を乗せた。

  持ち帰る量は大体いつも通りであったが、今回は思いがけず赤子を連れて帰ることになった。

  「荷車が揺れるから、赤子の竹のゆりかごの下に木の葉や草を敷いて揺れんようにしようか。 直射日光が眩しくないよう日陰となるように覆いをつけてくれんかな」

 

  帰りは予定より早まったが、荷車の速度はゆっくりしたものだった。 

  しかも、老夫婦は途中の小休憩を頻繁に、しかも長めに取った。 

  その度毎に、老夫婦は赤ん坊を抱っこしながら「可愛い、可愛いのう・・」

 

  前回までの採取旅行は、持ち帰るものが薬草や焚付、薪であり、また久しぶりに家族の顔が見れる使用人や弟子達は疲れていても足取りは軽かったのだが、今回は時間がかかりそう・・。 まあ仕方が無いか・・。

 

       老夫婦一行は里山の薬草園施設を出発した。 

  定期的な旅行なので、使用人達にも顔なじみの漁師や農家が道中にできる。 

  運が良ければ、里山近くでは鳥や卵や動物肉、川付近だと魚などの水産物、田畑の近くでは農産物を薬草との物々交換で家に持って帰れる。 

  町中にある我が家でも手に入るが、やはり値がはり鮮度も落ちる。 

  折角の田舎まで来る機会なのだが、今回は残念ながら入手量は少な目だった。 

  実際、都への帰途、都の市場へ物資を運搬する荷車をたくさん見かけた。 

  また、都に近くなると弓や刀で武装している足軽の姿も目にした。 都の安全のための警備に関わっているのだ。  

 

  こうした老夫婦一行やその周辺の動きを異星人の赤子(カグヤ姫)は感じ取れていた。 

  見た目は地球人の赤ん坊と違わないのだが、つまり地球人のふりをすることができていたのだ。 

  老夫婦一行をずっと観察していた、異星人スタッフともコミュニケーションを取っていた。 

  つまり異星人スタッフとカグヤ姫の話す内容とは、

「小型侵入艇の着陸地点は、“人間”という地球の支配生物が踏み入らない山間部であったが、 山麓部には”村“があり、住人は植物を住居周辺で栽培したり、他の生物を狩猟したりして生活していた。 

村の住人は少し離れた、人間がより多数で住んでいる”町“へ物々交換するためにたまに行くようである。 

町や村への移動は徒歩や、家畜と言う他の生物を利用して行き来している。 

人間同士の争いでは刀と言う武器で相手を殺してしまう残忍さがある。 

ただ、すべての人間が刀を使用するわけではなく、本来多くの人間は好戦的ではないようである」というような事。

 

 

(次回に続く)

SF異星人カグヤ姫物語

 

 

左図:コウモリの超音波 中図:竹林 右図:竹節の中のカグヤ姫(いずれも”いらすとや”)
 

 

 

  異星人(カグヤ姫)は、職業上定例の薬草採取に来ていた老夫婦一行に偶然の中に見出されました。
  しかし、この偶然の出会いは、カグヤ姫の養父母を探していた異星人達により何年も前に周到に計画されたものだったのです。

 

  異星人のスタッフは季節柄地球人の興味を引くの発光に目をつけました。

  つまり、蛍狩りの地球人の目を引くように異星人のいる竹が螢のように適切な時期に発光するような仕組みにしたのです。

  つまり、発光のタイミングは、異星人の仲間からの連絡や自身の持つ能力(超音波、赤外線を認識など)により、地球人の竹への接近を感知した結果でした。

  そうして、異星人の思惑通り老夫婦により異星人の赤ん坊は引き取られました。

 

 

  本SFショートではカグヤ姫異星人として描かれています。 

  この異星人は、地球で言えば昆虫に似た生物です。 

  しかも、彼らの住む星では全く異なる2つの生物より成る社会を作っています。 

  1つは大部分を占める生物(被寄生種)ですが、もう1つは少数派で多数派の生物に気付かれないように擬態の能力により多数派に紛れて生存(寄生)しております。 

  カグヤ姫は少数派の(寄生種)生物に属します。

 

 

  カグヤ姫達異星人は、故郷の星が環境破壊などで住みづらくなり、一部は他の星での生存を期待して故郷の星を出発しました。  

  しかしながら、移住船での居住星の探索の旅の途中に仲間を感染症で失います。

  残ったカグヤ姫達の生残には、ライフサイクルの維持に不可欠なパートナーと成りうる(被寄生種)生物を見つけないといけません。

  つまり、失った仲間がやってくれていた子孫の生育を、かわりに地球人の手を密かに借りようと企てます。 

  勿論、異星人の擬態能力で外見は地球人です。

 

  育ての親候補として人の良さそうな老夫婦が選ばれた訳ですが、果たして異星人達が目論むようにカグヤ姫は育っていけるのでしょうか?

      

  異星人達は、世界中に出されたカグヤ姫のような里子達が、幸福な生活を送れるように願いながら観察を継続していきます。 

  何故なら場合により、異星人達は地球を離れて新たな移住星候補を探索する旅に出なければなりません。

 

  本SFは、題名の通りカグヤ姫を含む異星人達の立場でみた物語です。

  さて、かぐや姫が出てくる「竹取物語」ですが、あらためてWikipediaを見てみますと、平安時代に成立した物語で、作者不明で、正確な成立年も未詳とあります。

  「源氏物語」の文中にも記述があり、日本最古の物語だそうです。

  9世紀後半から10世紀前半頃に成立したとされる、かなによって書かれた最初期の物語の1つだそうです。

 

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目次

第1章:異星人

第2章:地球

第3章:カグヤ姫(現在はこちら!

第4章:求婚

第5章:領主三角(みかど)氏

第6章:カグヤ姫の憂鬱

第7章:帰還

第8章:エピローグ

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(前回まで)

 

  竹の中では幼生が食べられるような団子様の物と、竹から出た後にも摂れるような丸薬様の物とした。 

  竹の中や、地球人に竹から取り出されてからも何らかの理由で栄養補給がされなかった場合に備えてである。 

  期待通りの地球人による保護が進まなかった緊急事態に備えてだった。 

  まあ念のためである。

 

 

  卵の中で安全に成長して生まれた胎生は、卵の中に同時封入された栄養剤と抗菌剤でそれ以降も順調に生育していく。 

  さらには、カグヤ姫が後日残していった栄養剤や抗菌剤は地球人にも有効であり、漢方薬医の老夫婦にも重宝されることになる。

 

  また、地球人に発見されやすいように、胎生がある程度成長する頃合いに竹がホタルのように発光するような細工をする予定であった。 

  しかし、これだと不運にも地球人が竹になかなか接近する機会がないと発見されないかもしれない。 

  無駄に発光しないよう、地球人が接近した場合に丁度発光させるように変更した。 

 

  成長に伴って外から刺激、例えば見知らぬ生物の接近とかに対してカグヤ姫の体内で分泌される液性の警戒因子により、竹の遺伝子に混ぜられたホタルの遺伝子が働きだし発光するような仕掛けとした。 

  それを、外部から地球人の行動を観察している異星人スタッフ、あるいはAI検知システムより竹の中のカグヤ姫に連絡がいくようにした。 

  一種の超音波様の物によりコミュニケーションはとれるのだ。 

  一種の警報シグナルを受けたカグヤ姫は、自身の緊張ホルモンを分泌し、また周囲の仲間にも知らせる一種の臭気を発生させる。 

  こうした警報システムに竹の発光を連動させたのだ。

 

  異星人達は前述の通り昆虫に似た生物であり、竹の節の中にいて竹に接近する外部の生物を探知できる能力を本来持ち合わせていた。 

  元々寄生性生物である異星人は、周囲の被寄生性生物の探知は死活問題であり、地球上で言えば赤外線様、超音波様、嗅覚等により知覚や、それらを通信手段にも利用できた。 

  従って、竹節の中の赤ん坊のカグヤ姫は、蛍狩りをする老夫婦達の存在やさらにカグヤ姫のいる竹に近づく行動は手にとるようにわかっていた。 

  異星人スタッフやAIからの連絡もあったが、カグヤ姫自身も地球人の接近を見逃さなかった。

  そして遂には異星人達の目論見通り、薬草採取中のお爺さん達に発見された。 

 

  この竹の中と異星人スタッフのコミュニケーションは、カグヤ姫の地球人への擬態にも有効であった。 

  今までの異星人の寄生種から被寄生種への擬態は、長い共同生活の歴史で成り立っていたためほぼ準備不要であった。 

  ただし、いままでの被宿主と地球人はかなり外観が異なっており、ファーストコンタクトとなるカグヤ姫には見守るスタッフのサポートが必要だった。 

  老夫婦の眼の前に現れたカグヤ姫は既に地球人の外見をしていた。 

  異星人達は擬態能力があるのだが、カグヤ姫に地球人の赤ん坊の外見についての情報は、竹節にこのコミュニケーションにより順時与えられた。 

  異星人達は、カグヤ姫が今後一緒に暮らすようになる老夫婦の使用人や弟子達の子供達の外見、行動、成長過程等の情報を大まかには知らせていた。 

  老夫婦の家で一緒に暮らすようになった後からは、地球人の子供のDNAを含む分泌物や髪の毛、爪等は、カグヤ姫により密かに採取されより良い擬態のために利用されることになる。 

  こうして、カグヤ姫が老夫婦に出会う前に擬態の段階は着々と進められていたのだった。

 

 

(次回に続く)

SF異星人カグヤ姫物語

 

 

 

 

 

左図:蛍狩り 中図:螢の発光 右図:竹林 (いずれも”いらすとや”)

 

  異星人(カグヤ姫)は、職業上定例の薬草採取に来ていた老夫婦一行に偶然の中に見出されました。
  しかし、この偶然の出会いは、カグヤ姫の養父母を探していた異星人達により何年も前に周到に計画されたものだったのです。

 

  異星人のスタッフは季節柄地球人の興味を引くの発光に目をつけました。

  つまり、蛍狩りの地球人の目を引くように異星人のいる竹が螢のように発光するような仕組みにしたのです。

  手付かずの自然に恵まれた時代の螢の群れは、どれほど大群だったでしょうか?

  また、灯がそれほど明るくない時代の漆黒の闇の中で、熱くない小さな光の集まりが山河沿いに大きな渦を作って揺れ動くダイナミックな様を、目の当たりにできた当時の人々は何と羨ましいことでしょう。

  そうして、異星人の思惑通り老夫婦により異星人の赤ん坊は引き取られました。

 

 

  本SFショートではカグヤ姫異星人として描かれています。 

  この異星人は、地球で言えば昆虫に似た生物です。 

  しかも、彼らの住む星では全く異なる2つの生物より成る社会を作っています。 

  1つは大部分を占める生物(被寄生種)ですが、もう1つは少数派で多数派の生物に気付かれないように擬態の能力により多数派に紛れて生存(寄生)しております。 

  カグヤ姫は少数派の(寄生種)生物に属します。

 

 

  カグヤ姫達異星人は、故郷の星が環境破壊などで住みづらくなり、一部は他の星での生存を期待して故郷の星を出発しました。  

  しかしながら、移住船での居住星の探索の旅の途中に仲間を感染症で失います。

  残ったカグヤ姫達の生残には、ライフサイクルの維持に不可欠なパートナーと成りうる(被寄生種)生物を見つけないといけません。

  つまり、失った仲間がやってくれていた子孫の生育を、かわりに地球人の手を密かに借りようと企てます。 

  勿論、異星人の擬態能力で外見は地球人です。

 

  育ての親候補として人の良さそうな老夫婦が選ばれた訳ですが、果たして異星人達が目論むようにカグヤ姫は育っていけるのでしょうか?

      

  異星人達は、世界中に出されたカグヤ姫のような里子達が、幸福な生活を送れるように願いながら観察を継続していきます。 

  何故なら場合により、異星人達は地球を離れて新たな移住星候補を探索する旅に出なければなりません。

 

  本SFは、題名の通りカグヤ姫を含む異星人達の立場でみた物語です。

  さて、かぐや姫が出てくる「竹取物語」ですが、あらためてWikipediaを見てみますと、平安時代に成立した物語で、作者不明で、正確な成立年も未詳とあります。

  「源氏物語」の文中にも記述があり、日本最古の物語だそうです。

  9世紀後半から10世紀前半頃に成立したとされる、かなによって書かれた最初期の物語の1つだそうです。

 

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目次

第1章:異星人

第2章:地球

第3章:カグヤ姫(現在はこちら!

第4章:求婚

第5章:領主三角(みかど)氏

第6章:カグヤ姫の憂鬱

第7章:帰還

第8章:エピローグ

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(前回まで)

 

 寄生種は自分達の仲間を認識できるのである。 

  繁殖期には子孫の卵や幼生を被寄生種の集団に潜り込ませるというサイクルである。 

  日本に着いた探査船からは、幼生の段階で地球人の社会に潜り込ませようとの計画が立てられた。 

 

  異星人の選抜された卵を地球人にどうやって興味をわかせ、持ち帰らせるか?

 

 

  そのまま地上に置けば、鳥類や爬虫類の卵に間違われ興味を惹かないかもしれないし、そもそも動物の餌となるかもしれない。 

  卵の安全のためには何かの中に隠せれば良いのだが、木の洞の中では目立たないし、地球人が取出す時にも破損しないで取出すのも難しそうだ。 

 

  その際に一人のスタッフがという植物の利用を提案した。 

  竹は地球人に好まれ、しかも中の空間は決まった円筒形の空間があり簡単に割れる。 

  目印の付いた一節を切り出すには、地球人のナタや刀で切り刻む必要がなく、最少の切り口で節内を開けることができる。 

  倭人の竹細工のための竹の取り扱い方は、スタッフにより観察されていたのだ。

 

  さて、次に異星人の卵が入った竹に地球人の注目する目印をどう付けるかだが、後に異星人の科学技術(遺伝子操作)、生理機能(地球人の接近を認識)や地球人の慣習(蛍狩り)からアイデアが生まれた。

  つまり、地球人に注目されるように、森の中で光っている”ホタル”という虫の発光遺伝子を竹のDNAに挿入して、竹節の中の異星人が地球人の接近を感知した時に発光させて気を引くようにした。

 

さて、異星人達のプランは承認され、ゴーサインが出た。

 

  異星人達は、地球人が足を踏み入れる里山の竹という植物を選択した。 

  異星人スタッフは、準備として竹の中の異星人の幼生が利用できるように栄養剤と抗菌剤を注入することにした。 

  竹の中では幼生が食べられるような団子様の物と、竹から出た後にも摂れるような丸薬様の物とした。 

  竹の中や、地球人に竹から取り出されてからも何らかの理由で栄養補給がされなかった場合に備えてである。 

  期待通りの地球人による保護が進まなかった緊急事態に備えてだった。 

  まあ念のためである。

 

 

(次回に続く)

SF異星人カグヤ姫物語

 

 

 

 

 

左図:スパイ・ドローン 中図:スタッフ・ミーティング 右図:蟻の巣(いずれも”いらすとや”)

 

カグヤ姫は、職業上定例の薬草採取に来ていた老夫婦一行に偶然の中に見出されました。
  子供達が既に独り立ちした老夫婦は、かわいい竹の中の赤ちゃん(カグヤ姫)を家に連れ帰り育てようと決めます。

  しかし、この偶然の出会いは、カグヤ姫の養父母を探していた異星人達により何年も前に周到に計画されたものだったのです。

  異星人達は、左図のようにドローンロボットを使って老夫婦について養父母としての適性を秘密裏に調べた結果に基づき、中図のように探索スタッフ議論し中央の承認を得ました。

  養父母合格により、スタッフは自然なカグヤ姫との出会い装うべく立てた計画を実行していったのです。

 

  本SFショートではカグヤ姫異星人として描かれています。 

  この異星人は、地球で言えば例えば右図のような昆虫に似た生物です。 

  しかも、全く異なる2つの生物より成る社会を作っています。 

  1つは大部分を占める生物ですが、もう1つは少数派で多数派の生物に気付かれないように擬態の能力により多数派に紛れて生存しております。 

  カグヤ姫は少数派の生物に属します。

 

  カグヤ姫達異星人は、故郷の星が環境破壊などで住みづらくなり、一部は他の星での生存を期待して故郷の星を出発しました。  

  しかしながら、移住船での居住星の探索の旅の途中に仲間を感染症で失います。

  残ったカグヤ姫達の生残には、ライフサイクルの維持に不可欠なパートナーと成りうる生物を見つけないといけません。

  つまり、失った仲間がやってくれていた子孫の生育を、かわりに地球人の手を密かに借りようと企てます。 

  勿論、異星人の擬態能力で外見は地球人です。

 

  育ての親候補として人の良さそうな老夫婦が選ばれた訳ですが、果たして異星人達が目論むようにカグヤ姫は育っていけるのでしょうか?

      

  異星人達は、世界中に出されたカグヤ姫のような里子達が、幸福な生活を送れるように願いながら観察を継続していきます。 

  何故なら場合により、異星人達は地球を離れて新たな移住星候補を探索する旅に出なければなりません。

 

  本SFは、題名の通りカグヤ姫を含む異星人達の立場でみた物語です。

  さて、かぐや姫が出てくる「竹取物語」ですが、あらためてWikipediaを見てみますと、平安時代に成立した物語で、作者不明で、正確な成立年も未詳とあります。

  「源氏物語」の文中にも記述があり、日本最古の物語だそうです。

  9世紀後半から10世紀前半頃に成立したとされる、かなによって書かれた最初期の物語の1つだそうです。

 

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目次

第1章:異星人

第2章:地球

第3章:カグヤ姫(現在はこちら!

第4章:求婚

第5章:領主三角(みかど)氏

第6章:カグヤ姫の憂鬱

第7章:帰還

第8章:エピローグ

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(前回まで)

 

  異星人達は、カグヤ姫とお爺さんを接触させる機会を伺っていた。 

  そこで、お爺さんが薬草取りに出かけているときに出合うように段取りを整えることとした。 

  薬草取りの時に偶然カグヤ姫に出会うように細工するのである。  

 

  老夫婦が竹の中の赤ん坊に出会う先々数年前のことであるが、異星人の小型探査艇の中でスタッフ達の話し合いがもたれた。

 

 

 

  「我々は地球の昆虫という生物に似ている点がある。 

より複数の兄弟が生まれ、養親の卵に内緒で、われわれの卵を混ぜて育ててもらうライフサイクルがある。 

  我々は養子を出す寄生種なのだが、養親になってもらう被寄生種が、この新居住星探索の旅の途中で死滅してしまった。 

  今、この地球では地球人にこの被寄生種になってもらえそうか各チームが調査している。 

  我がチームの現在の最有力候補は、地方都市に住む老夫婦で、漢方薬医として知性があり、また城主の顧問としての行政職にも着いており、また弟子や使用人を養っている財力もある。 

  現在、観察期間を終え、調査員(カグヤ姫)を老夫婦との共同生活に送り込むよう指示があった。 

 老夫婦の数年間の行動記録から調査員が自然に出会えるようにアイデアを出してくれないか?」

 

  異星人たちは、地球人から見ると昆虫に近いような生活環を持っており、子孫は被寄生種の卵に混じった状態の卵から生まれて一緒に育ててもらうか、卵から生まれた幼生が被寄生種の幼生に潜り込み育ててもらう。 

  こうして発育して、ある成長期に達すると一時的に羽が生えて密かに被寄生種の集団を離れ、寄生種だけの集団で活動する。

  寄生種は自分達の仲間を認識できるのである。 

  繁殖期には子孫の卵や幼生を被寄生種の集団に潜り込ませるというサイクルである。 

  日本に着いた探査船からは、幼生の段階で地球人の社会に潜り込ませようとの計画が立てられた。 

 

  異星人の選抜された卵を地球人にどうやって興味をわかせ、持ち帰らせるか? 

 

 

(次回に続く)